「医療的ケア児」支援、大きく前進!

超党派「永田町子ども未来会議」で、自民党の野田聖子さんや木村弥生さん、 民進党の細野豪志さん、公明党の山本博司さんらと奮闘してきた、 「医療的ケア児」を支援するための法案がこの日の厚生労働委員会で審議採決 されました。歴史的な日です。

医療的ケア児をとりまく現状と将来的な課題について、きちんと国会の場で論戦し、 今後の大きな流れを変える一里塚として議事録に記すことが重要と考え、 私は厚生労働委員会に所属する委員ではありませんが、 わが党の西村ちなみ筆頭理事にお願いして、厚労委員会での質問時間を頂戴しました。

地域における“医療・福祉・教育”の連携支援を構築に向けて、 政府や塩崎厚労大臣の大変前向きなご答弁を頂くことができました。

本法案は既に衆議院本会議を通過し、参議院での審議を待つ状態であり、 今国会で成立の見通しとなっています。(5月19日現在)

 

■以下、少々長くなりますが、国会でのやり取りをできるだけ正確にお伝えするため、議事録より抜粋して、質疑のハイライトをご報告致します。

<障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案>

荒井委員: 私は厚生労働委員会の委員ではないのですけれども、きょうは、医療的ケアということが 今回の法案で初めて定義をされました。私は、画期的な事項だというふうに評価をいたしますとともに、この問題がなぜずっと放っておかれたのか、そしてこれからどういう方向性で制度の設計なりをしなければならないのか、それが結果的には医療ケア児を抱える親御さんの安心につながっていくのだという、そういう気持ちで、きょうは無理を言ってここに立たせてもらいました。

塩崎大臣とは、原発の国会事故調の法案をつくるときに御一緒させていただきましたけれども、また全く違う立場できょうは議論をさせていただきたいというふうに思います。

まず、この写真を見てください。これが全てだというふうに思います。この写真の親御さんは、社会的な地位のある方であり、財産もお持ちの方だと私は思います。私財のある方であろうかと思ます。しかし、その方が、これは自分のお子さんですけれども、このお子さんを預かってくれる保育園を探すのに、東京じゅうを歩き回って、そして、たった一カ所だけ東京にあった。そこの保育園に通わすために、そのお母さん一家は移転をしたということなんです。

今、日本は、小児科医療と周産期医療は世界じゅうで一番進んでいると言われています。今や、妊娠しているときに、おなかの中にいるお子さんがもしかしたら障害児かもしれない、そのための治療も可能なぐらいに。そして、世界じゅうのお金持ちが、この小児科医療あるいは周産期医療のために日本に訪れているという状況であります。

しかし、その結果何が生まれてきたのかというと、昔であるならば残念ながら死んでしまっていたお子さん、生まれたとき、昔、お医者さんは、赤ちゃんの足を持って、お尻をぽんぽんとたたくんですね、そして、おぎゃあと声がすれば、ちゃんと呼吸ができる子供さんだということで、よかったですねということですけれども、ぽんぽんとたたいて、息がされていないお子さんは、残念でしたという形で扱われていたのが普通でありました。しかし、最近は、そういうお子さんでも、人工呼吸器をつけると、ちゃんと生きていけるんです。

この写真をもう一回見てください。ここの喉についているのが人工呼吸器の装着部分です。夜寝るときに、この真ん中に人工呼吸器がありますけれども、これを装着しないと呼吸できないんです。そして、このおなかの中にあるのは胃瘻です。栄養をここから直接胃に送る装置であります。これがなければ、この子供は栄養補給ができないんです。こういう子供が、今、年間数千人生まれているんです。かつては、この子供たちに対する支援いうのは行政の中でそれほど必要とされていなかったのだというふうに思いますけれども、医療の進歩あるいは生命の尊厳さ、そういうものを大事にしていこうという動きが大きなうねりとなって、この子供たちが生まれてくるようになり、成長するようになったんです。

しかし、その負担はどこに来ているかというと、お母さんです。先ほど、そのお母さんが東京都内を走り回って保育所を探した、たった一カ所だけその保育所があったと言いました。

私、この間の2014年の選挙、やっとこさっとこ当選をして、東京に戻ってまいりました。そうしましたら、私の息子が、おやじは成長戦略だとか経済政策だとかTPPだとか大きな話ばかりやっているけれども、本当に制度のはざまで苦しんでいる人たちのための仕事をするべきじゃないかというふうに説教されました。そして連れていかれたのが、フローレンスというNPOを経営している駒崎弘樹君がやっている、ヘレンという施設でありました。そこで会ったのがこの子なんです。

全国でたった一つですよ、こういう子供を預かってくれる施設は。そして、少し大きくなりましたので、ヘレンでも扱いに困って、普通の保育所に行ってくださいと言われたそうであります。普通の保育所に行くのに、探しましたら、保育所で、看護師さんをつけてくださいと。看護師さんを探すと、月50万かかると。いかにそのお母さんでも難しいといって、そして悩んでおられたときに会いました。

この制度のはざまで揺れている医療ケア児、これを何とかしなければということで、2015年の2月に研究会を発足することにいたしました。普通、政治家がやる勉強会というのは超党派の勉強会というのはなかなかやらないんですけれども、そういう勉強会をやって、これは専門的な知識が必要だからということで、小児科医の前田先生というこの世界では神様のような小児科医。あるいは、たった一つのこのNPOをやっているフローレンスの駒崎君。さらには、霞が関の中で関心を持っている若手の官僚。厚生労働省では、村木事務次官(当時)にお願いをして推薦してもらいました。津曲室長です。それから、これは小児医療と密接な関係がありますから、医政局にもお願いをしました。今、文科省に出向している佐々木室長であります。さらには、教育にも大きな関係があるだろうということで、文科省のしかるべく人にお願いをして、若手の官僚を出してもらいました。齋藤室長という方でありました。

これらで約一年間かけて熱心に研究をいたしました。私は、この難しさ、あるいは医療的ケア児というのが、この中でも知っている方はほとんどいないと思うんですけれども、その方々に対応するためには特別立法が必要なのではないか、議員立法をしようかというところまで考えたんですけれども、今回、塩崎大臣が大胆に、今度の改正法案の中に医療的ケア児という言葉を新たに定義をし、そしてこの対策を推進していくということを宣言されました。私は物すごく大きな評価をするところであります。

余り褒めると私の党から怒られるかもしれませんけれども、久しぶりに、霞が関、特にこの厚労省関係の委員会がしょっちゅう対立をしている委員会の中で、私たち野党も賛成をする方向で取りまとめた法案の一つでございます。

塩崎国務大臣(厚生労働大臣): 先ほどお話がありましたように、荒井議員とはいろいろな問題で御一緒にやってきたことが多々ございますが、今回、医療的なケアが必要な子供さんたちの問題についても問題意識の共有をさせていただけるということは、大変ありがたいことと思っております。

今般の改正で、医療的ケアが必要な障害のあるお子さんやその御家族を、病院とかあるいは入所施設だけではなくて地域でもしっかりと支えられるような体制、保健、医療、福祉などの関係者の連携体制を構築することを、地方公共団体の努力義務として規定することにいたしました。

こうした法律上の規定の創設によって、都道府県や市町村において、医療的ケアが必要な障害のあるお子さんやその御家族が地域で安心した生活を送ることができる支援体制づくりを積極的に進めていただきたいというふうに考えておりまして、厚労省としても、全国のそれぞれの都道府県の担当が集まるような会議において、好事例の提供や意見交換などを通じて自治体の取り組みを促進してまいりたいと思っております。(中略)

今回のこの法律改正に加えて、そういった方々の医療情報を全国どこにその子供さんが行っていてもわかるような仕組みを考えられないかということを、今、実は厚生労働省の中で検討させているところでございまして、これは、先生や、私どもの自民党でいえば野田聖子さんなどが熱心に取り組んでいることからも刺激を受けて、そのようなことをさせていただいているところでございます。

荒井委員 : この研究会には、野田聖子さん、それからここにおられる木村さん、それから宮川さん、あるいは公明党では山本さんなどが熱心に、必ず参加をしていただくという形で会を進めてまいりました。

*  *  *  *

荒井委員 : インクルージョンという考え方が相当普及してきたというか定着してきたというふうに思うんですね。 障害を持たない人たちも、障害を持っている人たちも、ともに地域で生活をしていく、ともに支え合っていく、それが社会なんだそういう考え方が普及しつつある。

私は、この医療ケア児もまさしくその対象なんだろうというふうに思うんですけれども、今後とも文科省には今進めている方向をもっと大々的にやってほしいと思うんですけれども、決意を込めて政務の方から御意見をいただきたいと思います。

義家 文部科学副大臣 : 医療ケアが必要な生徒児童を含め、障害のある子供たちについて小中学校の通常学級での受け入れを進めることは、インクルーシブ教育システムの理念からも重要であるというふうに考えております。

このため、小中学校での通級による指導等のための教員定数の拡充、医療ケアのための看護師を初めとする多様な専門家の配置の促進、小中学校において日常生活の介助等を行う特別支援教育支援員の配置のさらなる促進、通常学級における障害者理解の推進等を図っているところでありますが、今後とも、こうした取り組みを通じ、障害のある子供たちの通常学級での受け入れを含めた教育環境の整備に全力を尽くしてまいりたいと思っております。

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荒井委員 : ところで、親御さんたちの話を聞くと、一番大変なのは、やはり相談の窓口がなかなかないということです。大体、障害児じゃないとか、何とかの対象になっていませんとかといって窓口をたらい回しにされる。これはお役所仕事で、根拠法令がないとそんなふうになりがちですから、今回、こういう法律をつくられましたから、各自治体もそれなりに整備をしていく、またそれをウオッチする必要があると思います。相談窓口の話なんですが。
もう一つは、彼女たちが、休む場がない、子供たちをショートステイででもいいから預かってほしいと。今全国で一カ所、これはふやしていく努力はするんでしょうけれども、一気にはふえないですよね。そうすると、八千人の親御さんたちは常時子供さんについていないとだめなんです、手を離しちゃうと呼吸できなくなるという子供さんを面倒を見ているわけですから。ショートステイできるようなそういう施設がどうしても必要だと思うんですけれども、これらについて、これは厚労大臣にお聞きしようかな。

塩崎国務大臣 : 医療的ケアが必要な障害のあるお子さんの在宅生活を支えるためには、当然、今お話が出たショートステイみたいなものがちゃんとバックアップとしてある、あるいは、いろいろな相談、調整を行わなければならないわけで、それをコーディネートする役割の人が必要だということは、今先生の御指摘のとおりだと思っております。

平成28年度から、短期入所事業所をふやすために、新規開設事業者を対象として、既存施設の取り組みの好事例等について講習会の実施などの支援をやっていこうということにしています。 それから、コーディネーターを養成するための研修の実施を、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業のメニューに追加するということをやる。

さらに、平成28年度診療報酬改定においても、医療型の短期入所サービス利用中の医療処置などについて診療報酬を算定できるということを明確化したところでございます。(中略)

いずれにしても、厚労省が預かる保育の世界における看護師の配置についてもお話がございました。
いろいろな議論が今、実はこの問題について行われているところでもありますので、私ど今回この児童福祉法に位置づけた限りは、やはり実態として本当に医療的ケア児の子供さんたちが、普通の、言ってみれば他のお子さんたちと同じような暮らしができるように心を砕いていかなければならないというふうに思います。
■関連資料はこちらから
①質疑全体の議事録(PDF
②5月11日厚生労働委員会における荒井さとし配布写真資料(PDF
③参考:永田町子ども未来会議 概要資料(PDF