2016.09.27 第11回 永田町子ども未来会議で熱議論

臨時国会が始まって早々の9月27日、超党派国会議員と各省の担当者、医療・NPO・医療的ケア児の当事者らが集まって、久しぶりの「永田町子ども未来会議」を開催しました。過去最高となる40人近くの参加者です。
できるだけ、関係者全員の顔が見える座席配置を大事にしているため、議員席もゲスト席も会議室はぎゅうぎゅう詰め!!

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医療的ケア児をはじめ、就学後、卒業後の障害児者とその家族をどのように支援サポートすべきか、激論を交わしました。
厚労省、文科省も、新たな支援モデル事業を新規で打ち出したり、学校における看護師配置事業の定員を1000人から1200人に増員する概算要求を行ったりと、試行錯誤ながら現場のニーズを実現するための突破口を開こうと腐心しています。

TBSの「報道特集」で、医療的ケア児をとりまく現状について、丹念な取材で追っている川端ディレクターとクルーの皆さんも密着くださいました。

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以下に説明・議論内容を記載します。
議論の経緯をできるだけ丁寧に残し、必要とする保護者の方々にも情報を共有していきたいと考えております。長文となりますがご容赦ください。

 

【議論内容】

1.「居宅訪問型児童発達支援事業」に関する要望  資料1
駒崎 弘樹 氏 (NPOフローレンス代表)

・重度障害のため外出が著しく困難な障害児が発達支援を受けにくい状況を解消するため、障害児の居宅を訪問して発達支援を行うサービスを新たに行うというのがこの支援事業の趣旨。
・看護師単価がつかず保育士を想定しているところから、対象者から医療的ケア児が排除されており、現場のニーズを無視した制度となっている。

・看護師が配置できるようにすること、また就学後の子どもや、家だけでなく放課後デイも使えるようになれば、支援を必要とする医療的ケア児やその家族など、困っている人を助けられる。ニーズのど真ん中に合うような制度運用をお願いしたい。

2.子ども・障害児関連の補正予算・概算要求説明
〇説明者
【厚生労働省】
伯野 春彦 氏(医政局地域医療計画課在宅医療推進室長)
野村 知司 氏(雇用均等・児童家庭局総務課少子化総合対策室長)
高鹿 秀明 氏(障害福祉課障害児・発達障害者支援室長)

〇資料2~7について説明
【ポイント】
・医療的ケア児保育支援モデル事業は、新規モデル事業で、実施主体は都道府県や市町村など。事業内容は地方自治体で組む。看護師を雇う、保育所についてもらうための補助で、補助率は国と都道府県が各1/2ずつ。資料3

・「医療的ケア児支援促進モデル事業(仮称)」H29年度概算要求
事業所等において医療的ケア児の受け入れを促進し、必要な支援の提供が可能となる体制整備をし、医療的ケア児の生活の向上を図ることを目的とした新規モデル事業。資料4;11ページ

・障害者総合支援法改正により、今年6月に施行された医療的ケア児支援のために、自治体が地域において医療・福祉・教育の連携に取り組むこととする努力規定から一歩進めるための試みとして、来年度予算で約2,370万円のモデル事業費を要求。

◎三府省の局長連名による通達
「医療的ケア児の支援に関する保健、医療、福祉、教育等の連携の一層の推進について」資料5

・荒井コメント:霞が関出身の私にはよくわかるが、各省の局長連名通達は異例なこと。大変画期的なことで、この通達を全国の教育委員会や医療関係者、地域での包括ケアの拠点である地域包括支援センターの実務担当者や、医療的ケア児の保護者の皆さんにも広く周知する努力をしなければと発言。

・在宅医療・訪問看護ハイレベル人材養成事業
H27年度から医師を対象とした小児在宅医療、看護師を対象とした訪問看護の研修会を開始。前田先生にも大変なご尽力をいただいている。昨年始まったばかりで、全国研修会として1か所で集まって行っており、研修に参加した人がそれぞれの地域で講師となって各都道府県で研修を実施する仕組み。来年度もこの事業モデルで概算要求中。資料7

【文部科学省】
森下 平 氏(特別支援教育課特別支援教育企画官) 資料8

・医ケアが必要な児童生徒等への対応に関する概算要求事項として、昨年定員1,000名に引き上げた公立学校への看護師配置事業を、来年度予算で更に1,200人へ引き上げるための予算要求。

・資料の2ページ:インクルーシブ教育システム推進事業として、自治体が特別な支援を必要とする子どもへの就学前から学齢期、社会参加までのワンストップサービス窓口を設けている自治体の先行事例を、首長のリーダーシップにより全国展開していく。全国30箇所、3カ年で90箇所を目途とし、各県2つぐらいのロールモデルを推進。

・資料の3ページ:学校における医療的ケア実施体制構築事業
学校における看護師研修や、小規模な自治体での子どもたちの受け入れなどを広域自治体がネットワークサポートするなど、サポート体制の質の向上を研究するための新規モデル事業。

・資料の4ページ:医療的ケア児の登下校における保護者の付添いに関する実態調査を実施中。保護者のつきそいの頻度と理由について調査中、これから集計作業に入る状況であり、まとまり次第、別途報告。

【内閣府】
竹林 経治 氏(子ども子育て本部 子ども子育て支援担当参事官) 資料9

・医療的ケア児関連では、資料最終ページの補正予算の中に、熊本地震の保育所等の利用者にかかる負担減免措置を計上。

■質疑・議論のポイント

・野田議員
局長通達について、今回は教育現場宛なので知って貰えるかと思っていたが自治体現場は誰も知らなかった。いちばん必要なのは母子分離をしなきゃならない。それが教育。そこを解消するための通知発出。

・前田医師
看護師の研修について、質に方向を変えていくという事業は有り難いが、看護師が学校で働くこと自体が抱える問題点がある。医師とセットで働く安心感。学校現場では人工呼吸器をさわれないので、目の前で子どもの具合悪くなっても親がくるまで看護師さんが側についていながらただ待っている。
小児医療に関して、重症心身障害児はこれまでは療育の範囲だったが、先生たちが高齢化して、30-40歳代を診ている。比べて、医療的ケア児はNICUとかPICUなどの先端医療から産まれた障害児であり、医療の質がちょっと違う。もっと小児学会を巻き込んで、ちゃんと技術が伝わる研修を考える必要がある。

・文科省担当者
ご指摘は野田先生の問題提起とつながっている。看護師がいても(人工呼吸器を)やれないのがどういう理由なのか。学校の体制、看護師の能力を補う方向で代案を考えていきたい。検討に入る。

・厚労省医政局
前田先生の「学会を巻き込んで」というご指摘はおっしゃるとおり。文科省の研修の際に積極的に支援していく。

・木村議員
看護師は、「医師の包括的な指示で行う」ということになれば裁量が増える。指示を出している先生たちや、メインストリームの医療的ケアを必要とする子どもたちを輩出している医療機関があまり関与しておらず、重心の先生たちが気の毒。もうすぐ、この枠組みにない医療ケアが必要な子どもたちが学校現場に入ってくる。いまの学校の看護師ではまったく対応できない。

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3.「障碍児者の自立に向けて」 &「我が子を通しての全国の保護者の悩み」
小林 正幸 氏 (全前脳胞症の会 天使のつばさオヤジの会) 資料10
竹内 ふき子 氏 (全国肢体不自由PTA連合会会長)  資料11
田添 敦孝 氏(東京都立光明特別支援学校 前校長)

◯竹内会長の発言要旨

・夏のウィルスが原因で高熱、急性脳症を起こし、1歳8か月で肢体不自由に。瞬きをせず、視力がほとんどない状態。器官栄養とたんの吸引が必要な子どもの母。
・障害児が医療的配慮のもとで育成されるのが療育であり、就学前は療育、福祉のなかで右も左もわからない親子が育ててもらっている実感があった。
療育センター幼稚部や盲学校にも通った。あっという間の3年間は療育の中で安心した生活だった。

・療育から教育に変わる段階で、壁に直面。就学時に親が必ず一度は悩むのが学校選び。機能的訓練の受け方や、母子分離など、どういう風に将来を見据えて、どう未来に夢を持ったらいいか、7歳の子を前に、親身に相談に乗ってくれる人がいない。

・教育の場に行ける、教育を受けられることがとっても喜びだったが、「教育」がつくからこそ我慢しなければならないことも。保護者同行の学校行事参加など。

・特別支援学校では、教育と結びつく機能訓練の実施。
教育と療育、両方一緒でないと駄目なんだという実感がある。

・卒業後のいき場所は、どこに受け入れ先があり、どんな訓練、余暇があるか。親がどんどん歳をとっていく、だれが見てくれるのか。

・肢体不自由PTA全国大会の場で保護者が悩みを共有し、取り組みを語りあう。連合会としてどう取り組んでいくことが、親として責任を持てるのか。

・今日の概算要求の資料をみて、計画をたててくださることに感謝している。このお金がどう生かされて、実感できるのか。もう卒業、すぐにこうなって欲しいことばかり。(実現まで)どれぐらい時間がかかりますか?

・HPを新しくして全国のお母さんたちがネットワーク化、発信できる体制へ。みんな不安がある。知ること、考えるきっかけに、行動する力へ。つながりを持てるように。

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〇小林正幸さんの発言要旨と提起

・資料中にある親の会のアンケートでは、医療的ケア児者の高校卒業後の課題として、日中活動の場が少ないことが最大の悩み。施設が足りず、行き場がない。

・資料の9ページ
全国の医療的ケア児の保護者の声と意見を集めて、行政への提言や提案を行っていくスキームを立ち上げた。竹内会長の肢体不自由PTA連合会(会員18,000人)や、この永田町子ども未来会議とも連携しながら、定量調査により実態を明らかにしていくこと。そして、お母さんたちがこう思ってしまう現場を変えていくための政策提言を当事者から行っていきたい。

【意見交換】

・野田議員:竹内さんが数年前にまさに就学に悩んだその渦中に、私は今まさにいる。教育に居場所がない 先が何も見えない不安

・田添先生:昨年度、校長会の会長を務めさせていただいた。野田先生がおっしゃったように、親の会が自立して、しっかり定量的に数を共有する。局長通達について、親はほとんど知らない状況。子どもたちの豊かな人生を後押ししていきたい。

・荒井:局長通達は、行政用語が多くてお母さんたちにはわからない。親や看護師さんにもわかるように広める努力を。

・高木議員:(卒業後の医療的ケア児者の)日中の生活支援は、抜本的に考えないと立ち行かない段階にある。

・NPO矢部理事長:待った無しの状況が火を見るよりも明らか。スピード感と瞬発力を落とさず対応を。

・荒井:この会は、議論したことが霞ヶ関のなかでは珍しいほどのスピード感で実現していく。冒頭で、駒崎さんが整理した当面の課題についても、現場の意向をどう予算や制度に結びつけていくか。検討して、厚労省より次回以降にコメントを。

 

<資料一覧>
第11回永田町子ども未来会議次第
資料1:居宅訪問型児童発達支援事業の問題点とご提案(NPO法人 全国小規模保育協議会 理事長/全国医療的ケア児支援協議会事務局長/認定NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹)
資料2:厚生労働省 平成28年度 第二次補正予算(案)の概要(厚生労働省)
資料3:新規医療的ケア児保育支援モデル事業(厚生労働省)
資料4:平成29年度 障害保健福祉部 予算概算要求の概要(厚生労働省 障害保健福祉部)
資料5:医療的ケア児の支援に関する保健、医療、福祉、教育等の連携の一層の推進について(厚生労働省医政局長、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長・厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長、内閣府子ども・子育て本部統括官、文部科学省初等中等教育長)
資料6:保育所等訪問支援拡大関連資料(厚生労働省)
資料7:在宅医療訪問看護ハイレベル人材育成事業(厚生労働省)
資料8:医療的ケアが必要な児童生徒等への対応に関するH29年度概算要求事項(文部科学省)
資料9:平成29年度における子ども・子育て支援新制度に関する概算要求等の状況について(内閣府子ども・子育本部)
資料10:全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会の取り組み(全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会会長 竹内ふき子)
資料11:障碍児者の自立に向けて-今すべきことを考える-(歩く重症心身障害児の父/全国医療的ケア児支援協議会 親の会 リーダー/天使のつばさ オヤジの会 小林正幸)
永田町子ども未来会議.-趣旨と開催履歴(超党派 永田町子ども未来会議 民進党 衆議院議員 荒井さとし)