2017.4.21 第14回永田町子ども未来会議を開催

■議論テーマと概要

1.厚労省・医療的ケア児に関する調査のビッグデータ分析  16:05~16:10
前田 浩利 氏 (医療法人財団はるたか会理事長・あおぞら診療所松戸院長)

⇒資料参照:「医療的ケア児数の具体的な計算方法

・医療的ケア児者に関する実態調査(厚労科研費による公的調査)の結果に基づき、
ビッグデータを解析した結果について、調査チームのメンバーである前田医師より
解説

・0~19歳の医療的ケア児数は増加傾向にあり、平成27年度は17,000人。
在宅医療で人工呼吸器をつけている子どもの数は、10年間で約10倍以上の3,000人に
急増しているが、十分な往診診療を受けられていない現状。

・小児在宅医療の人材育成ならびに体制強化が急務。
医療の高高度化により、NICU(新生児特定治療集中室)やGCU(回復治療室)から
退院して在宅医療に移行する場合、地域で従来型の高齢者在宅医療にあたってきた
医師では最新医学知識の更新が不十分なため、対応できない。

・「在宅療養支援診療所に対する小児在宅医療実施に関するアンケート」の結果によれば、
小児在宅診療の難しさについて、「小児経験がないのでわからない」が最多。

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2.子どもの口唇口蓋裂における医療的ケアの現状等について 16:10~16:25
小島 一郎 氏 (口唇口蓋裂友の会 事務局長)

⇒資料参照:「口唇口蓋裂について」「口唇口蓋裂児(乳幼児)の母親として

・永田町子ども未来会議としては初めてお聞きするテーマとして、細野豪志さんのご紹介により、
「口唇口蓋裂友の会」の皆様、当事者のお子さんやお母さん約10名にご参加いただき、
子どもの口唇口蓋裂における医療的ケアの現状等についてお伺いしました。

・成長に応じて唇や花の歪みが生じるため、成長がとまる18歳前後に外科的治療による
修正手術を受けるかどうかを決めるが、疾病の理解がなければ制度補助のスタートラインに
立つことができない。

・口唇口蓋裂と知的障害・発達障害を併発するケースが非常に多いこと、卒業後の就労先や
安定した住居、地域における包括的なシステムが重要。障害者の親自身がちょっと障害を
持っていることがよくあり、然るべき時に手続きのタイミングを教えてくれるなどの
地域のコーディネーター的な役割があれば、取り残されずにフォローを受けられる。

・知的障害の場合は本人の声が届きにくいため、後回しにされがちな傾向がある。

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3.学校において医療的ケアの必要な児童生徒等の状況について 16:25~16:35
森下 平 氏 (文部科学省 特別支援教育課 特別支援教育企画官)

⇒資料参照:「学校における医療的ケアの必要な児童生徒等の状況について

・文科省初の医療的ケア児数ならびに親の付添いに関する実態調査を実施。
特別支援学校等において、看護師が常駐しているにも関わらず、学校側の希望
により親の付添いが常態化している現状について、今後対策を講じていく。

・人工呼吸器の管理を一律に保護者対応とするのではなく、個別のケースに応じた
対応を検討するよう、自治体に伝えた。人工呼吸器についてのガイドラインや
マニュアルをつくるモデル事業(7自治体)を実施するので、結果について改めて
報告する。

・スクールバスについても、人工呼吸器の子どもは一律に乗せてもらえない運用に
ついて、(医療的ケアの程度や吸引の頻度などを考慮して)個別に判断して欲しい。

・福祉部局と連携し、スクールバスに乗せられない重度医療的ケア依存の子ども
の場合、通学での介護タクシー利用負担について工夫・検討していく。
4.障害福祉報酬改定における全国医療的ケア児者支援協議会からの要望
(児童発達と放課後デイへの医ケア児加算について)  16:35~16:45

駒崎 弘樹 氏 (病児保育・小規模保育の認定NPOフローレンス代表)
戸枝 陽基 氏(社会福祉法人むそう NPO ふわり理事長)

⇒資料参照:「障害福祉報酬改定における全国医療的ケア児者支援協議会からの要望」「日常的に家族が行っている医療的ケア

・駒崎さんより、児童発達支援事業・放課後デイサービス事業に対する医ケア加算の
新設を提案。障害福祉報酬改定に向けた今年1年の最大の課題。

・医療的ケア児は、重症心身障害児に入らないため、一番マンパワーやケアの程度が
重いにもかかわらず、普通障害児としての報酬単価と判定されるため、
医ケア児の受け入れ先が広がらず、良心的な事業所は赤字覚悟で受け入れている。
都加算がなければ収支が成り立たない現状。

・医ケア加算の提案では、看護師や機能訓練担当し、熟練福祉職である3号研修受講者や
嘱託医など、配置する専門職の人件費の積み上げと月あたりの営業日数等を基に、
報酬概算を15,000円と算定。
全国の事業者数から推計して、全ての医ケア児が週2日ずつ通所できるためには
約300億円の新規財源が必要と試算。

・戸枝さんより、医療的ケアの介護職への範囲拡大ならびに介護職のキャリアアップに
よる人材供給策、「医療的ケア士の新設」について提案。

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5.一括質疑&意見交換             16:45~17:00

■質疑・意見交換のポイント・補足事項
・医療的ケア児支援に取り組む「医療的ケア児 市区町村議員勉強会」から、渡部恵子・東京都中央区議、赤江なつ・北区議、長谷川たかこ足立区議の3人が、自治体議員として初めて永田町子ども未来会議をオブザーブ参加。元NHKアナウンサーから国立成育医療研究センター「もみじの家」のハウスマネージャーに転身された、内多勝康さんにもご参加賜りました。

・出席者数も過去最大級の50人弱、議案テーマも盛り沢山となったため、短時間で凝縮された発表と意見交換が続き、大変な熱量でした。

・超党派の国会議員、小児在宅医療の関係者、医療的ケア児の支援・受入環境向上に奔走するNPO関係者、そして霞が関の各省担当者、自治体議員、メディア関係者らが、全員の顔の見える距離感で、真摯に激論をたたかわす貴重な場になっていると痛感します。

・細野議員
口唇口蓋裂の現状について、産科・小児科との情報共有を依頼。
また育成医療の制限が18歳となっているが、成長段階で外科治療を行っても効果には疑問があるため、成長状況に伴って柔軟に受けられるよう要請。
→現状でも疾患の状況に応じて、難病支援センターで情報提供を行っているが、難病指定される方と指定を受けられない方がいる。

・野田議員
息子がリアルタイムで特別支援学校の1年生。バスに乗っている間の医療的ケア不要の診断書があってもスクールバスにはまだ乗せてもらえず、当初の約束どおりではない。
国会のない月曜日に付添い登校したが、経管栄養の注入のためだけに8:00から14:00まで控室でずっと付添いしているのは虚しい。
看護師がいてもお母さんがいなければならない。
胃瘻での注入のミキサー食を明らかに禁止している法律はないのに、手作りご飯がダメの根拠法は?
少しでもリスクを減らそうという先達の悪知恵としか思えない。
医療ケアするなかで指導医の役割に疑問符がある。
主治医ではないので、それぞれの子どもの状態はわからない。主治医が学校とそれぞれつながればいい。
子供の成長は早い。あっという間に進んでいく。法改正から1年だからといっている場合ではない。
次回、学校での付添い実態調査を行ったお母さんたちの匿名ミーティングについて前田先生よりお話していただくが、学校現場の凄まじさで、憲法や人権なんかあったもんじゃない。
是非抜本的な取り組みをお願いしたい。
・山本議員
駒崎さんと戸枝さんから説明があったが、医療的ケアのこどもたちの支援に関しては、平成30年の報酬改定が大事。財源が厳しいなかでどこまで押し込んでいくか。
総合支援法見直しも見据えて、医療的ケア児以外の課題も沢山あるなかで、超党派勉強会の役割が極めて大きい。