2017.12.19.第17回永田町子ども未来会議(議論の山場)

衆院選後初めてとなる、第17回永田町子ども未来会議を開催しました。

直前に来年度診療報酬改定の結果が公表され、また平成30年度予算原案も大枠が決定しました。総枠についてのフレームが固まりつつあり、いよいよこの永田町子ども未来会議で今夏にまとめた「提言」でも、最優先課題の1つとして取り上げた、「平成30年障害福祉報酬改定」に関する厚労省検討チームの議論が大詰めのタイミングを迎えています。

この日の議論の中心は、厚労省担当者からの障害福祉報酬改訂の検討状況のレクを受けた実践レベルでの意見交換となりました。

医療的ケア児を預かることのできる日本でも数少ない障害児保育園を立ち上げたフローレンス代表理事の駒崎さんや、超重心児に対する切れ目のない支援を目指す業界の先駆者として奮闘するNPOふわり理事長の戸枝さんから、「せっかく作るのであれば、子ども達の支援のために活用することができる現実的な支援・制度設計を」「いま目指している方向で議論が進んだ場合に、現場で起こりうるミスマッチ」等について、熱い要望・激論がありました。

公務ご多忙の合間を縫って、総務大臣の野田聖子先生、厚労副大臣の髙木美智代先生、公明党の山本博司先生に加え、自治体議員や関係者の皆さん、養護教員や医療的ケア児のお母さんなど、今回も多くの関係者が集まって活発な議論が展開しました。

■次第&出席者ならびに参考配布資料
配付資料→PDF①
※参考資料:直近2年程度の医療的ケア児や永田町子ども未来会議に関する主要な報道記事の一覧を、国会図書館に作成していただきました。報道による世論喚起にも後押しいただき、医療的ケア児とそのご家族への理解や支援の輪が一層広がっている手応えを感じております。関係各位のご尽力に感謝御礼申し上げます。

 

テーマと発言要旨

1.平成30年障害福祉報酬改定の検討状況

三好 圭 氏(厚労省 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室長)
迫井 正深 氏 (厚労省 保険局医療課長)
配付資料→PDF②

1)障害福祉サービス等報酬改定について⇒平成30年度の障害福祉サービス等報酬改定率 +0.47%

2)平成30年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性について
〈障害福祉サービス等報酬改定検討チーム〉

⇒平成29年5月以降、報酬改定検討チームとして実施した47関係団体ヒアリング、全15回の議論内容に関する整理・とりまとめ資料。医療的ケア児関連は、p.5〜6中心に資料に沿って説明。

3)平成30年度障害報酬改定について(医療的ケア児関連)
〈厚労省障害児・発達障害者支援室〉

・改定率がセットされたので、今後1~2月にかけて具体的な配分を決めていく。

現在、医療的ケア児について厳密に確立した定義はないため、次回改訂に向けて判定基準の確立に向けた作業を引き続き進める。平成30年報酬改定においては医療的ケアの必要性に関する簡素な基準を設け、「人員配置基準に加え看護職員を配置した場合」に体制加算を創設する方向性で検討が進んでいる。(p.7)

・体制加算の条件については、医療的ケアの必要性に関する簡単な基準(仮案)よる判定スコアを検討中。仮案なので、今後、ご意見をいただいて精査する。送迎支援に対する加算の上乗せも併せて検討中 (p.8)

・今の加算では不十分という指摘を受けて、医療連携体制加算の見直し (p.10)

・相談支援加算について、質の高い事業所をきめ細かく評価する必要性 (p.11)

・福祉型のショートステイ区分新設を検討中 (p.12)

4)平成30年度診療報酬改定に向けた検討(医療的ケア児関連)
〈厚労省保険局医療課〉

・概略は3ページ。12/8中医協「小児への対応セッション」への提出資料から抜粋した課題整理。小児科料用指導料の医療的ケア児等への対応が論点のひとつ。療養指導料の改定において、今回は、慢性疾患を有する小児を医療的ケア児としっかり読めるように対応する(5ページ参照)

・超重症、準超重症までに該当しないけれど重度の小児の算定に関して、運動機能は座位までにという点についてしっかり議論。 (p.6)

・訪問看護ステーションと学校との連携については、中医協でも個別にセッションを起こしている。情報共有をしっかり、特に学校との連携の明確化が必要。(p.7)

2.学校における医療的ケアの実施に関する検討会議の進捗

森下 平 氏 (文部科学省 特別支援教育課 特別支援教育企画官)
配付資料→PDF③

▶学校における医療的ケアの実施に関する検討会議について

・学校現場において医療的ケアができるようになったのは5年前。通知に基づいて学校現場でケアを行ってきたが、人工呼吸器や訪問看護ステーション活用など、当初想定していなかった状況が起きているため、検討会を10月に発足。

・永田町子ども未来会議で幅広く議論した提言をもとに、検討会の課題をセット。学校がすべて責任を負う責任体制になっていることが、医療的ケアがなかなか進まない一因であり、学校と教育サイドと医療側の役割分担について明確化する趣旨。

・人工呼吸器や、たんの吸引や経管栄養以外の医行為を必要とする場合の留意事項について、今年度から保護者の付き添いなしのモデル事業実施し、検討を進めている。最終的には、検討状況を会議に持ち寄って、どう受け入れ体制を整えるかの「通知」や指針などのテキストを整えていく。次回検討会は、12/26開催。

 

3.学校における医療的ケアに関する日本小児学会・小児神経学会の動向について

前田 浩利先生(日本小児科学会 重症児者・在宅医療委員会)
配付資料→PDF④

1)日本小児学会、小児神経学会の学校における医療的ケアに関する対応

2)医療施設における気管カニューレの事故抜去等の緊急時の対応に関する要望(日本小児科学会)

3)学校における医療行為Q&A 第1案(日本小児科学会 重症児・在宅医療委員会)

・「学校における医療行為 Q&A」素案をまとめているが、人工呼吸器のスイッチやコンセントは医療行為ではないという整理。これを基準にしながらやれれば、だいぶ違う

・親がいると壁になって拠ってこないが、看護師さんだと他の子どもたちが寄ってきて、交流が始まる。今、厚労科研で都内5校と松戸市の1校を巡回診察しているが、自宅と学校では、子どもたちの顔が全然違っている。医療的ケア児は家で王子様状態だが、学校では礼儀正しく、挨拶もきちんとしている。

・学校に行くと感じるのは、県ごとに相当差があるということ。気軽に相談できる体制が必要。医療機関は、基本的にコスト意識で動くので、看護師に雑用をさせない。医者にしかできないこと以外は看護師に任せるし、本来なら医療職がやる行為を学校ではやらせない。学校では事細かにマニュアルを作成して看護師に対応させている。

 

■一括での質疑・意見交換(ポイント)

○荒井
この未来会議は、効果を出す・現実的な対応をすることにフォーカスを置いて、ひとつずつやってきた。今日の厚労省出席者は実力者の課長クラスが勢揃いしている。NPO側には実務経験豊富な方がいて、幅広い議論ができるのが特色。小児科学会、医師会が非常にこの分野に関心をもって実務的にも重点事項として取り組む動きがあり、従来は前田先生などが孤軍奮闘されていたところから、大きく前進している。

○戸枝
この会議の参加者も顔ぶれも広がっており、地方議員やマスコミ報道も。大変心強い。今日の時点では、まだ看護師加算スコアがわからないので、今のままだと送迎加算の370円だけ。さみしい気持ちになっている。また、状態を確定してからジャッジするので、半年は加算されないという制度上の課題があり、看護師加算は赤ちゃんを受けたら半年はつかないことになる。がん末期の赤ちゃんの場合、よりシビアな状態。加算判定までに6ヶ月という制約を外していただくよう考慮をお願いしたい。運動機能の考慮状況について、「座位まで」という縛りが外れるのは前進(現状では、立って歩く医療的ケア児は、重症心身障害児の判定基準から外れて重心加算がつかないため、受け入れ先がなかなか見つからない)。居宅訪問型児童発達事業は、医療的ケア児のお母さんが仕事復帰をするために使える制度であり、在宅でシビアな方を支えられる制度だが、1回1日9,000円の報酬設定では、正規職員に戻れずに辞めなければいけないお母さんが出てくる懸念がある。医療連携体制加算は、看護師がいない普通のデイサービスでお子さんを預かる場合にしか適用されない。3号研修を受けた熟練の介護職員が医療的ケアを行うことには1円の加算もつかない。相談支援に近いようなかたちで、周辺を整備するなどの考慮をお願いしたい。

○駒崎
「370円ということはない、大丈夫だろうな」と期待していますが、看護師加算の配置基準のスコアは3以上で評価されるから良いのではないかと思うが、気になるのは、○人以上いればという看護師の配置基準。現実的に医療的ケア児はケアにマンパワーがより必要なので、障害児保育のヘレンだとマンツーマン体制。看護士1人で、子どもが何人という制度設計によって、看護師体制加算という中核的制度が使えるかどうかが決まってくる。実態に合わせて作って頂けないと、○の数字が1つずれるだけで、せっかくの制度が使えないことに。戸枝さんからも言及があったが、6ヶ月制度は廃止して欲しい。居宅訪問型児童発達支援事業については、一律に9,000円(日額の報酬設定ではなく)レスパイト、パート、次は正社員のようにグラデーショナルな使い方ができると社会復帰の手助けとなる。

○三好室長
「6ヶ月制限」は診療報酬の基準との整合性の問題もある。NICUから出たお子さんは、今の基準でも1ヶ月後に加算を受けられる制度設計があり、厳しいご指摘も踏まえて検討していく。(駒崎さん指摘の看護師配置基準の)人数の関係も、一番の肝。(通所支援加算の)370円にはならないよう、今日の指摘も踏まえて、看護職員と介護職員もあわせて加算体制を検討する。

・医療的ケアのお子さんがいる家族が一番関心を持っているところなので、もう一押し頑張って欲しい(荒井)
・整合性ということを考慮しながら、しっかりと頑張ります(高木議員)
・6ヶ月の話だが、医療からみても筋が合わないので何とか考えて欲しい。
NICUは退院日から大丈夫だが、ずっと家にいて(在宅医療で)具合が悪くなって、気管切開して帰ってきた子が使えない。退院したその日から使える医療、介護サービスを。併せて、医療的ケアの医療技術の標準化について、厚労科研での検討を進めて頂きたい(前田医師)
・高校卒業後の生活介護の問題について、今日は言及がなかったが、医療的ケア児全国で17,000人のうち、3,000人ぐらいが今回の報酬改定で高校卒業する。行き場がない。新しいデバイスは、医療職ではなく介護職にみてもらうときに変わってくる(小林)

 

■次回開催等
次回は、通常国会開会後を目途に、来年1〜2月開催を予定しています。
今後のテーマとして、子どもの貧困・障害児対策の自治体間格差問題、乳児院における医療的ケア児の窮状などについてヒアリングや現地視察が案としてあがっており、精力的に活動準備を進めます。

来年4月の診療報酬改定・障害福祉報酬改定の実施に向けて、
医療的ケア児への支援が、名実ともに第二段階へ深化を遂げられるよう、そしてご家族の皆さんに変化を実感していただけるように、永田町子ども未来会議の仲間の皆さんと共に、引き続き奮闘します!

<配布資料一覧>
次第&出席者 ならびに参考配布資料PDF①
平成30年障害報酬改定関係資料一式  PDF②
学校における医療的ケアの実施に関する検討会議の進捗PDF③
学校における医療的ケアに関する日本小児学会・小児神経学会の動向についてPDF④