2018.2.16 第18回永田町子ども未来会議(障害福祉報酬改定の内容)

2/5の厚労省障害福祉サービス等報酬改定検討チームの会合で、平成30年度障害福祉報酬改定内容が発表されたことを受け、第18回永田町子ども未来会議の場でも主な改定内容についての説明を受け、成果とともに今後の課題を整理する機会となりました。

資料①平成30年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容

“医療的ケア児とご家族の切迫したニーズに対して、必要十分な支援を届ける。実感として変化を感じられる支援段階に押し上げる”という当初の目標に照らせば、医療的ケア児の実情を反映し、大島判定に変わりうる客観的な「新基準」の確立が平成30年報酬改定までに間に合わなかったこと、そのため「医療的ケア児加算」という新制度創設によって抜本的に状況を改善するという目標を達することは叶いませんでした。厚労省の担当部局を始め、関係各位の最大限の努力に対しては感謝の念でいっぱいですが、結果として、今年度は、医療的ケア児の受け入れのための手厚い人員体制配置で頑張っている良質な事業者を評価するための「体制加算」の看護師加配加算の拡充が主な改定内容となりました。

医療的ケア児者協議会の駒崎弘樹事務局長

医療的ケア児者協議会の駒崎弘樹事務局長からは、医療的ケア児の受け入れ先を新規で広げていくための使い勝手の良い支援をという現場の目線で、これまでも再三の提起を頂いてきました。報酬改定の全容が明らかになった今の時点において、看護師加配加算を受けることができる条件設定のハードルの高さが、医療的ケアのある子どもを預かるサービス事業の新規参入につながるインセンティブとしては働かないのではないかとの懸念を表明。「制度あって利用なし」という画餅にならないためにできうる運用上の工夫についての緊急提案がなされました(詳細は資料②永田町こども未来会議への提案参照)

提起に対し厚労省からは、「駒崎さんの提案を拝見して、どのようなことができるか考えてみたい。利用者スコアに該当する人が何名以上という規定は、法律でも省令でも告示でも決まっていないため、解釈と運用の余地があるが、他の報酬制度全般にも関係する一般的な通知がある。一般ルールにあてはめると、定員を達成するのは厳しい。永田町子ども未来会議での議論や支援も頂いてできあがった仕組みであり、広がらなければ意味がない。(新基準の確立ならびに医療的ケア児加算といった)3年後の報酬改定に向けた検討課題への対応もあるので、その中でどういうことができるのかを前向きに検討したい」との回答がありました。

野田聖子議員の総括コメントが非常に印象的だったので、この場でもご紹介させて頂きます。「医療的ケア(を支援する協議会は、福祉業界の中で)はまだまだ新参者。医療と教育と福祉の世界がつながっていないことで様々な問題が起きている。今回の改定結果に対する意見もあるが、東京都で気管切開で初めてスクールバスに乗せてもらう道を開いてきた、私のような“ファーストペンギン”からすると、この数年で現場はどんどん変わってきた。

小池都知事は、東京都ではスクールバスへの医療的ケア児の搭乗を全部OKにした。役所の議論では、最初はモデル事業から少しずつという議論もあったようだが、地方現場は、首長の腹ひとつ。

厚労省もいろいろあると聞いているなかで、大変よくやってくださっている。

実は、障害児の統計の中に、発達障害の子どもたちの数は入っていない。発達障害児者の支援の法律ができたのは12~13年前にも関わらず、未だに正確に対象者の数を掴んでいないというのが現状。医療的ケアは、ここにおられる皆さんが力を尽くしてくれたんだなと感謝している。現場はどんどん変わっているので、前向きに進んでいこう。」

(参考:下記の公表資料一覧および→http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000193399.html

また今回は、子どもの貧困対策における先進的な取り組みで知られる佐賀県武雄市の小松政市長をゲストスピーカーにお迎えしました。

子どもの貧困・格差の連鎖を断ち切るために教育が果たしうる役割や、小松市長が会長を務める全国179団体が参加する「子どもの貧困対策首長連合」が昨年末に政府に提出した要望書のなかで多くの地方自治体現場から寄せられた問題意識などについて、短い時間ながら貴重なお話を伺いすることができました。子どもの貧困に限らず、医療的ケア児を含む障害児者への対応支援においても、自治体間格差が広がっていることに対する懸念があり、

地方自治体支援の方策についても今後、長期的な視点で、広く検討していく必要があると考えています。

佐賀県武雄市の小松政市長

テーマ&関連資料
※対応者などの詳細については、次第(次第第18回永田町子ども未来会議180216)参照

1.平成30年度障害福祉報酬改定の配分結果  

三好 圭 氏
(厚労省 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室長)
■関連資料①平成30年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容

【関連/緊急提案】駒崎 弘樹 氏 (全国医療的ケア児者支援協議会 事務局長)
■関連資料②永田町こども未来会議への提案

2.子どもの貧困対策について   

小松 政 氏 (佐賀県武雄市長)
・自治体間格差に関する問題提起
・地方自治体現場の声について
・武雄市の先進事例 / 「子どもの貧困対策首長連合」の提言と取り組み

■関連資料
③:子どもの貧困対策について(子どもの未来を応援する首長連合)
④:子どもの貧困対策に係る制度の充実に関する決議

□ポイントメモ
・福祉から、教育をより重視した貧困対策へ
2年前に教育委員会に対策課をつくり、教育で貧困の連鎖を断ち切る。しっかり就職するまで20年間は見ていかなければならないことから、教育が融合したアプローチが必要。産官学で首長連合のシンポジウムも開催。

・自治体現場から要望が特につよかった3点
①貧困状態の子どもたちを支援する(生活保護ならケースワーカー)自治体でも支援が必要な子どもたちの支援で手一杯
②貧困になる前の早期対応、予防が必要だがそこに十分な手を打てていない。幼保・小学校で支援者が変わるなど、毎年支援をする人が変わっていくのが問題

・3つのキーワード
①早い段階での支援
②伴奏型支援、つなぎ
③「少し気になる子ども」への予防が重要

・武雄市では、今年から保健師、教員OBのコーディネーターをおいた。赤ちゃんの沐浴の仕方がわからないお母さんには、家にまで入っていってコーディネーターが沐浴を自分でやって教える。部屋の片付けも。家庭の中にかなり入っていってやっていく。小学校に入ると、教員OBにつないでチームとして伴奏、相談があればいろんな機関につないでいくことが大事。

・OECDのワーキングペーパーでは、日本においては学業をしっかりやって、社会的経済的に不利な環境から、4割が立ち直れる環境~エストニアに次いで2位

3. 障害福祉サービスの支給量調査の事例紹介※千葉県内調査

前田  浩利 先生 ( 医療法人財団はるたか会理事長 )
■関連資料⑤:市町村支給量調査
⇒千葉県内の市町村を調査。福祉サービスの支給量は各自治体の窓口が決めており、千葉県で一括したガイドラインはつくれない。実質的に上限定めずとあるが、実際、利用の上限はあり、自治体間によって相当な差があることがわかる。

基本的には、通学通園はまったく認められていないし、お風呂も市によって支給量が全然違う。医療的ケア児の評価と支給のシステム構築を進めなければならない。

荒井の思い~平成30年度障害福祉報酬改定を受けて
現場に根ざした忌憚ないな意見を尊重することも含めて、密度の濃い複層的かつ多角的な議論と、スピード感がこの「永田町子ども未来会議」ならではでだと感じています。
医療的ケア児はまさに社会の先端課題です。同時に、限られた人たちだけの問題ではないと私は捉えています。
超高齢化に人口減少、国家財政の危機にも瀕する中で、今後、介護崩壊や自治体破綻といった問題も潜在化するリスクを抱えています。
私たちは、誰もが社会的弱者になる可能性がある時代を生きているのです。様々な社会問題の縮図としての医療的ケア児者への支援ということに対し、いかに解決策を見いだし、突破していくかというチャレンジの課程は、他の課題にも応用可能であると同時に、社会の意識に風を通していく作業そのものです。
いかに居場所や出番がある社会をつくれるか。いかに包摂して支え合うか。インクルージョン社会を実現するという大きな目標に向かって、超党派の仲間たちとともに全力で前進し続けます。

<参考資料一覧>
次第・第18回永田町子ども未来会議
①平成30年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容
②永田町こども未来会議への提案
③:子どもの貧困対策について(子どもの未来を応援する首長連合)
④:子どもの貧困対策に係る制度の充実に関する決議
⑤:市町村支給量調査
⑥平成30年度障害保険福祉部予算案の概要
⑦文科省特別支援教育課-平成30年度予算案