2018.03.16 第19回永田町子ども未来会議(診療報酬改定)

2015年2月に日本初の障害児専門保育園ヘレンを視察したことがきっかけとなり、同年3月に永田町子ども未来会議が発足。以降、精緻な議論を積み重ね、今回、第19回の会議で丸3年を迎えました。

第19回 永田町子ども未来会議・次第

関係各所のご努力もあり、この間の法改正や制度改正、診療報酬・障害福祉報酬改定などによって、「医療的ケア児」に対する社会的な認知や理解、自治体現場への浸透も進み始めています。まだまだ不十分な面もありますが、この3年の歩みを振り返ってみれば、一種、感慨深いものがあります。

1.平成30年度医療的ケア児関連の診療報酬改定項目について
迫井 正深 氏( 厚労省 保険局 医療課長 ) 中谷 祐貴子氏(同 課長補佐)

【関連資料】:「平成30年度診療報酬改定の概要(小児関連 抜粋)」

⇒主な改定のポイント
・今回、医療的ケア児のケアをよりサポートする目的で在宅医療の部分では、小児科療養指導料の見直し(小児慢性疾患が対象だったが、患者要件に追加)

○学校への情報提供に係る評価を新設
主治医が連携するかたちで、学校との情報共有・連携を進める

・入退院支援加算
退院について課題のあるお子さんも加算対象に明記し、小児専門病院でも取りやすいように算定要件を緩和。

・小児かかりつけ診療料の見直し
365日24時間いつでも相談を受けることが要件になっていたので、現実的に1人開業医では厳しいため、在宅当番医制への参加や、夜間休日に地域の先生と連携するような在宅当番医の案内などでも良いとする。要件緩和。

・福祉サービス事業との連携推進
介護事業所が敷地内に併設していることを条件とし、機能強化型と評価されると福祉事業所でも加算を取れるように要件の修正。

・本問看護料加算の回数を拡大(長時間の訪問看護における医療的ケア児への対応)
これまでは超重心児、重心児のみだった対象を医療的ケア児にも広げ、加算回数を週1日から週3日まで拡大。

・乳幼児加算の引き上げ・充実

・資料に記載はないが、ケアマネと医師が患者さんのお宅で急遽カンファレンスした場合には、診療報酬のなかで緊急ケア担当者加算を取ることができる。これまで医師と看護師しか取れなかった指導料を他の職種にも拡大(介護支援専門員・相談支援専門員)

→迫井医療課長
医療的ケア関連の診療報酬改定について、これで十分だとは思っていないが、長い取り組みが必要となる中で、今日の時点でのまとめという位置づけ。

→前田医師
福祉と医療の連携が進む。大変有り難い。ご配慮をありがとうございます。

→山本議員
診療報酬、文科、障害福祉の分野でも、今回の報酬改定で一歩、まずはスタートした。医療福祉・障害教育の連携をますます進めていく必要がある。

2.「もみじの家 持続可能な事業運営のために」
内多 勝康 氏 (『もみじの家』ハウスマネージャー)

【関連資料】
資料1:「国立成育医療研究センター もみじの家 持続可能な事業運営のために」
資料2:パブリックコメント

⇒ご提案の主なポイント

・医療と福祉が乗り入れたハイブリッドな公的支援を。
もみじの家では、医療と福祉の専門職がサービス提供しており、新しい支援が必要という実感。

・超重症児、準超重症児を受け入れた場合、手厚い医療が必要なので、医療の部分からの枠組みをつくって欲しい。
差額を補填する自治体の事業・モデル事業も各地で進みつつあり、短期入所を受け入れる病院が全国で9つに増加。

・また来年度から、川崎市が同様の補助金を創設。川崎市のお子さんが利用したときに、同額が川崎市からもみじの家に入ることになる。

・大島分類では、医療的ケアが必要でも動ける子どもたちが該当しない。
⇒加算だけでは実態とそぐわないため、新しい判定スコア・定義の確立を

・地域毎に取り組み、地域間の格差が広がっている。
⇒埋めるための超重症児者等管理料のような加算の仕組みをつくって欲しい。手厚いサービスを実施するインセンティブ加算(日中活動・入浴など)

■新しいカテゴリーのサービス体系が必要
医療福祉両面からの包括的なケアを提供するためのハイブリッドな新しい支援の枠組みの創設を。

→三好室長
大島分類のなかで看護職の体制加算で措置したが、きっちりした判定基準が必要。平成30年度からも研究班が継続するので、引き続き前田先生にも加わっていただいて、新たな基準づくりを進め、次の改定に向けて考えていく。

3. 一括質疑&意見交換

○3/12 日赤医療センター附属乳児院視察報告と今後の検討課題等

→野田議員
・養子縁組斡旋法をつくる何年か前にお邪魔したことがあるが、10年前に行ったときにはいなかった医療的ケア児がいることは非常に驚き。医療機関の乳児院なので、息子もそうだが、嚥下できない胃瘻の子に、口から物をたべる訓練をしてくれる点は良かった。胃瘻が外れた女の子が2人いるのは素晴らしい。

・大事なことは福祉と医療のハイブリッドの施設が必要。医師や看護師じゃなくても医療的ケアをしていいという法律ができない限り、問題は、義務教育にもいけない子の数が増えていて、見える化してきている。訪問教育を週に数回だけなど、憲法が保障している義務教育ではない教育がまかり通っている。

・日赤乳児院では、医療的ケアを持っているためのネグレクトや虐待については言及しなかったが、ネグレクトの確率は多くなるという盲点に気がついた。今までの議論とは次元のちがう話。そういう子どもたちが社会に支えられて、すべての子どもが幸せに暮らせることが目標。

→今井議員
・乳児院視察で、驚くべきことは、3歳以降の子どもたちも預かっている現状。就学前のお子さんまでいて、乳児院が小学校にあがる手続きまでもしている。医療的ケア児の3歳以降の受け皿がないことが大きな問題。障害、医療的ケア児など、子どもたちのニーズにあわせてやっていく国の施策へ。教育機会が薄いという感じもした。高校までの教育の確保について、インクルーシブのハウスをつくっていく必要・課題を感じる。

○障害福祉報酬改定の運用面の最終調整については?

→三好室長
・障害福祉サービスのなかでは、医療的ケアが必要なお子さんを支えられるような報酬体系にはなっていない。横串で積極的に評価できる仕組みにし、今回の加算も活用してどこまで受け皿を増やしていけるのか。改定内容については、既にパブコメにかけられている。運用レベルで最大限どんなことができるか。来週には決めて公表したい。

→野田議員
・色んな制度をつくっても、裏付けは限られた財源の中での取り合い。新規参入で予算をつけていかなきゃいけない中で、障害者同士でのけんかは良くない。財源の限界ではなく、財源を広げる担保を我々がやらなければいけない。役所の人がやる仕事ではない。これは政治の仕事。

→小林氏
・障害福祉報酬の件、ありがとうございます。スコア8点の要件が高いネックになり、3点、5点といった子どもたちがはねのけられる懸念。

→戸枝氏
・今回の障害福祉報酬改定で、立って動くが医療的ケアの子が救われたかというと、難しい。エビデンスが全くない。内多さんのお話もそうだが、立ち上がる医療的ケアの子の方が、チューブつけたまま歩いてどこかに行ってしまう。大島判定に変わる、誰がみてもわかる新基準という根拠をつくらないと次には進めない。知的障害がない医療的ケア児もいるので、障害のカテゴリーではなく、本来は子ども子育ての看護師加算をやるべき。ユニバーサルな保育園を増やす発想が必要。

 

■次回4月開催のテーマ案
・ICTサポートによるセラピーについて
( 全国医療的ケア児者協議会 小林正幸氏 / 結コミュニケーションズ高橋宣盟氏 )

 

<配布資料一覧>
第19回 永田町子ども未来会議次第
「平成30年度診療報酬改定の概要(小児関連 抜粋)」
「国立成育医療研究センター もみじの家 持続可能な事業運営のために」
パブリックコメント