2018.05.25. 第20回永田町子ども未来会議

[文科省・学校における医療的ケア検討会の中間まとめ]

働き方改革法案の強行採決を巡り、与野党激突の大荒れとなったこの日、衆院本会議後の17時から『第20回永田町子ども未来会議』を開催しました。

70分間、待った無しの真剣議論。野田総務大臣も激務のなか駆けつけ、後半から参加。政務の要職にあって公務や地方出張中であったり、国対責任者をお務めであったりと、参加することが叶わなかった各党派の国会議員もおられますが、「目指す社会や思いは共にある」と確信できる仲間です。それぞれの立場や司司で奮闘を続けています。

医療的ケア児 はまさに象徴的な存在ですが、政治を必要とする弱い立場の方々にいかに光を当てるかが、政治の本来の役割ではないでしょうか。

永田町子ども未来会議 が扱うさまざまなテーマは、与党も野党もなく、すべての子どもたちの笑顔と未来のために与野党が手を取り合って進むべき社会課題。着実に、世の中を変えるための地道な努力を続け、気がつけば20回を重ねていました。関係者の熱意、真摯なご努力に頭が下がります。

主なテーマと議論のポイント・配布資料は以下のとおりです。

次第(資料1)

1、 厚労科研費による平成29年度研究結果の報告(資料2
前田 浩利 先生

・ 医療的ケア児数、人工呼吸器児数の推移(資料p2)
→医療的ケア児が年間1,000人ベースで増えている中の約400人が人工呼吸器の子。小児科の30人規模の大きな病棟でも、普通は3〜4人であることから、高い伸び率。

・都道府県別医療的ケア児数(資料p3)
→都道府県別医療的ケア児の実態もだいたいわかってきた。10人以下だと、個人が特定できるため市町村単位での公表はできないが、研究者ベースでは把握出来ている。

・人口1万人当たりの医療的ケア児数は、青森0.78から沖縄2.22までと地域差、偏在が非常に大きい。理由はよくわからない。全人口対象なので、子どもの人口にすれば偏りがなくなるのではという仮説も検証していく。

・都道府県アンケート結果(資料p5)
→通達・法律に基づく「協議の場」の設置に関しては、18の都道府県が設置済み、24が設置検討段階で、現状では過半数には至っていない。

・実際にケアする市区町村に対するアンケート(千葉と東京都のみ対象)(資料p6)
→118市区町村のうち、協議の場を設置した自治体は3箇所のみ。通知を見ていないというところもある。手引きやマニュアルをつくってくれれば進められるという回答も多かった。

・小児科研修施設に対するアンケートでは、医者の6割が協議の場を知らないという結果が出たが、一方で呼びかけがあれば参加の意思があるという回答が8割。

2、学校における医療的ケアに関する検討会議「中間まとめ(案)」の概要
文科省 特別支援教育科 樫原哲哉 企画官

資料概要の説明

①学校における医療的ケアが必要な児童生徒数資料2
→H29年度の医療的ケアが必要な児童生徒数:8,218人(10年前から約2,300人増加)

②学校における医療的ケアの実施に関する検討会議「中間まとめ」概要

※基本的な考え方:小・中学校を含む「すべての学校」、人工呼吸器の管理などを含む「すべての医療的ケア」を想定。

・教育委員会や学校、主治医や保護者も含めて、医療的ケア児に関わるそれぞれが責任を果たすこととし、国が標準的な役割分担を示す。(役割分担は資料1のなかの表に記載)
・学校における医療的ケアの実施体制モデル(資料p3-4)

③学校における医療的ケアの実施に関する検討会議・中間まとめ(案)

・別紙:医療的ケア実施に当たっての役割分担例(資料p9)
・注目すべき画期的なポイント(資料p. 5冒頭参照)

「保護者の付き添いの協力を得ることについては、本人の自立を促す観点からも、真に必要と考えられる場合に限るように努めるべき」

[検討会の今後の方針として]
 ・医師が近くにいない中で医療的ケアにあたる看護師の不安を可能な限り解消するには、指導医、看護師などの関係者の連携が不可欠であり、学校は教育委員会のガイドライン等を踏まえ、実施要領をつくる。
・秋以降に、看護師等の研修のあり方について検討会で議論し、専門委員を中心とするマニュアル策定を検討中。人工呼吸器をつけたお子さんの取扱を含めて年内に最終とりまとめ予定。

3、「子ども子育て新制度における医ケア児の扱いについての問題点」
認定NPOフローレンス 駒崎 弘樹 代表

・居宅訪問型保育における不当な「日割り」規定の撤廃を求める意見書資料3
・子ども子育て新制度の居宅訪問型保育のQ&Aの問題点を指摘。健常児の保育園には日割りの概念はないのに、なぜ障害児だけ(療育)差別されるのか。保育は月毎の報酬制度設計だが、療育は行った回数。
・日割り規定について、有識者会議では何らの議論もされずに、内閣府の内部検討だけで重要な規定が発出されたため大きな混乱が起きている。納得できない。
・公定価格の報酬は事業者にとっては非常に大事なもの。居宅訪問型保育のために事業者は月額の正規雇用で人材を確保しているのに、報酬は日割り。これではせっかく制度をつくっても利用・参入が進まない。
・会議本体で1分たりとも話さずにきたことで、手続き上の瑕疵がある。

回答 : [内閣府子ども・子育て本部 西川参事官] (資料5
・来週からPDCAの検証をするが、居宅訪問型は思ったよりうまくいっていない。年末にかけて課題解決していきたい(この一ヶ月で中間的な課題整理)
・政府としても課題のひとつとしては認識している。

4、子ども家庭局所管の医療的ケア児関連の施策の動向
厚労省子ども家庭局子育て支援課 田中 悟 課長

すくすくジャパン!医療的ケア児に対する子育て支援について(資料6)

医療的ケア児保育支援モデル事業(資料p1)
・29年度から開始。スタート時は看護師のみだったが、30年度からは認定特定行為業務従事者である保育士も補助対象に改定。
・保育所における医療的ケア児の受け入れ状況(資料p2):認定を受けた、集団保育が可能な医療的ケア児が対象。〜6県については、医療的ケア児の保育所への受け入れなし
・放課後児童クラブへの障害児受け入れは毎年伸びている(15年前の約4倍)
・子育て世代包括支援センターの全国展開を目指していく。子育て・妊産婦の相談窓口であり、医療的ケア児に特化しているわけではないが、相談も受け止めている。全国展開の数字目標は未設置。

全体質疑・意見交換のポイント

・4月の障害福祉報酬改定結果や問題点などについて報告は?
→端的には、4月の報酬請求が5月の連休明けが第一回なので、統計的なものはまだ入ってきていないので、数字として現場の変化はわからない。放課後等デイサービスの報酬体系を大きく変えているので対応に追われている。見えてきた段階で、また永田町子ども未来会議にも報告(厚労省障害福祉課 三好室長)

・文科省の中間まとめに関して、最悪の事態の想定はしているのか?万が一、事故で亡くなった場合の何らかの保障や仕組みがあるのか。保障しないと難しいというのが校長先生や現場の意見としてある(戸枝)
→金銭的な部分については、学校で事故で亡くなる場合には、独法・日本スポーツ振興センターの災害給付によって補償できる仕組みがある。公立学校の場合は国家賠償補償となるので、最終的には自治体が負担をする(教員に負担はかからない)現実的に起きてしまった場合の心理的な負担で躊躇するケースにどう対応していくか(文科省 樫原特別支援教育企画官)

・厚労省の子ども家庭局のモデル事業は、画期的。国として初めて保育士の報酬評価に踏み込んだ。看護師に補助をつけても、夏休みには仕事がない不安定な学校現場の環境。介護職の対応で医療的ケアで毎日「むそう」に通えていた子ども(保育士でよかったのに)が、学校には通えなかった実態があった。学校現場に介護職を入れる仕組みを考えないのだとすると、教員が全部医療的ケアをやるという仕組みを考えているのかという疑問がある(戸枝)

・内閣府の居宅訪問型保育については、事業者としては参入もできない。フルタイム雇用して人手を用意したのに日割りという制度設計なので、居宅訪問型保育はまったくやられていない。また市区町村事業になっていることも課題。前田先生のデータでは、10万人都市で、医療的ケア児の平均は5〜6人。研修も市区町村がやれというが、研修内容もドクターが講習で、費用的手当もない。200万都市の名古屋市でさえも、研修もやらないのが実状。フレームそのものを考え直して、せめて都道府県に戻さないと難しい(戸枝)
→居宅訪問型保育は普及していないと思っている。新制度で様々なサービスが導入されたが、他にもうまくいっていない事例がある。都道県から市町村への流れのなかで、専門的なサービス・ノウハウや、財政的にも大きな負担。自治体、医療者、保護者、関係者に対して、財政問題だけでなくどうやって届けていくのか。年末までには何らかの結論を出したい(内閣府西川参事官)

・障害者福祉は、町村が主体になる例が多いが、予算だけでなくマンパワーの面でもなかなかできない。都道府県が代わりにやるか、町村機能の広域合併を主導していくか。総務省(旧自治省)と一緒になって社会保障分野での連携が必要だ(荒井)

・駒崎さんの説明には非常に説得力があった。教員や保育士さんの研修にどのぐらいかかるのか?(細野議員)
→基本研修は9時間。加えて実地研修。個体差が大きいので、手技手法などマンツーマンでの研修が不可欠。実地研修は子どもによって違うので、違う人がきたら個別に実地研修をやり直して習得してもらう。基本的には三号研修修了者なら保育士も同様(内閣府西川参事官)

・文科省の中間まとめで、「付き添いを真に必要とする場合に限る」という点は画期的だが、現場の雰囲気としては難しいのではないか?ある程度、現実的なやり方を提示しないとやりきれない。看護師か、保育士なのか、教員なのか保健室の先生かという現実案を提示した上で、なお違うやり方を取るのは構わないという格好で、できれば、最終案にしていただきたい(細野議員)
→そこを立脚点として、看護師や研修の話を進める。特定行為だけでは収まらない方が増えているため、基本的には看護師をしっかり配置する(文科省樫原企画官)

・予算がかかる話なので、方針とセットで予算を出さないと看板倒れになってしまう。現実的には看護師だが、お金がかかる話なので、1/3補助を拡充する議論を同時にお願いしたい(細野議員)

議論まとめ

<野田議員>

・昨日、内多さん(もみじの家ハウスマネージャー)と、BS日テレの医療的ケアの特集で出演したが、非常に反響が大きかった。改めて見える化が大事。

・次回のこの会議で、総務省の予算資料を出す。

・病院のなかにいるときは病児。しかし、(それは本来)人としての生き方ではない。これまでは法律もない制度もないなかで、それこそ親が根性で支えてきた。

・地方分権を進める大臣として、義務教育の部分など、進めてはいけないものもあるのではないかと感じてもいる。

・能力も知能も高いのに、受け入れてくれる場所がない子どもがいる。

・特別支援も地域性があるが、教育はたまたまそこに住んでいるからラッキー、アンラッキーではだめ。国会議員も、障害児だからという理由で学校に行けない子どもがいることをほとんど知らなかった。

・文科省が地方に押しつけているのはいかがなものか。地方分権だけにまかせると、首長の関心次第での教育格差が出ることもありうる。そのような状況は絶対につくってはいけない。将来のホーキング博士になったかも知れない可能性が潰えてしまう。

・そもそもの足かせは看護師がいないといけないという仕組みの前提にある。ルーツがどこにあるのか再確認する時期にある。三号研修でできることになっているが、実際は現場ではやらない。「看護師がいなきゃできない」という前提は未来会議ではとっぱらって行く。「看護師も人手不足。人件費も高い。非常勤になってしまう」という出来ない事のいいわけをとっぱらう。お医者さんがすくまずに済むよう、出産時の事故による障害補償金が出る制度があるが財源が余っている。分娩にたちあった医者個人の責任ではやってられなかったために制度ができた。医療的ケア児にはリスクがあるなら、重ねて補償をつくっても問題はない。そもそも論からスタートしてもらって「当時は意味があっても、いまはわけがわからないことがブレーキになっている」類いの法律を変える。法改正にはお金もかからない。

<内多・もみじの家ハウスマネージャー>

・医療的ケアの当事者の皆さんの声が力強く届くように、家族の皆さんがこれまで諦めてきた「思い」を発信したいと考えている。クリアに、実効性が高いものを。

今日作戦会議をキックオフしたが、自分たちでは物理的には発信が難しい方々を仲立ちする、プラットフォーム立ち上げを準備する。

3年後の大島基準改定の具体論に向けて、世界的にも医療的ケア児問題のポジションを明確化するようなシンポジウム・フォーラムを想定。諸外国の事例や諸外国がどういう医療的ケア児政策をやっているのかを見ていく。

<前田医師>

・(日本の医療が一番進んでいるため)医療的ケア児は日本が一番多く、かつ先進的。いまアメリカでも少しずつ問題になりつつある。

 

[資料一覧]

資料1①次第ー第20回永田町子ども未来会議
資料2②学校における医療的ケアの実施に関する検討会中間まとめ概要.
資料3③中間まとめ案本文
資料4④意見書(駒崎弘樹)
資料5⑤内閣府子ども子育て支援制度の概要
資料6厚労省子ども家庭局所管の医療的ケア児関連の施策動向
資料7⑦厚労省科学研究H29年度研究報告

 

次回テーマ案:ICTサポートによるセラピーについて

以上