2019.02.15. 第22回 永田町子ども未来会議(特別ゲスト:医療的ケア児の山田萌々華ちゃん)

冒頭、9歳の医療的ケア児である山田萌々華(やまだももか)ちゃんから、学校に行って勉強したいという作文の読み上げがあり、これはまさしく政治の責任であり、政治や行政などの立場を超えて、この場に会している我々大人のひとりひとりの責任だと痛感しました。申し訳なく、胸が痛みました。

先進国の日本で、教育を受ける権利は保障されていないのか。学校に通いたいと切望する子どもの願いすら叶えられない義務教育の制度なら、法律や制度を変えなければならない。
永田町子ども未来会議の最優先課題として、障害の有無に関わらず、学ぶ権利の保障や学校における親の付き添い問題に全力で取り組んでゆくことを確認しました。

 

■テーマ&議論概要

1.「学校に行きたい」医療的ケア児をとりまく教育現場の壁について

特別ゲスト:山田萌々香ちゃん(9 歳)と母親の美樹さん

  • 医療的ケア児と家族の主張コンクールで審査員特別賞を受信した作文の読み上げ
    →「大人は区別というがそれが私には理解できない。学校に通わせてほしい」
    →詳細はもみじの家ニュースレターNo15を参照。
  • 現状、萌々香さんは学校に通うことができていない。
    →人工呼吸器をつけている児童は保護者同伴ではないと学校に行けないのがルール。

(作文全文)
わたしは、今、小学3年生です。骨がとても弱いので、ねたきりです。

でも、みんなといっしょに笑うことができます。みんなと一緒におしゃべりができます。

だけど、学校に行けないので家にいます。わたしはみんなとちがって歩けません。

わたしはみんなとちがって、「人口こきゅうき」をつかっています。「人口こきゅうき」をつかっている子は、おかあさんといっしょでないと、学校に行けません。おとなは、「くべつ」とか言うけどわたしには、よくわかりません。

お友だちといっしょにべんきょうしたり、あそんだりしたいだけです。

わたしは、パパとよく、サレジオ教会に行きます。そして、かみさまにいつもおねがいします。わたしは学校に行けないのですか。わたしはそんなにわるい子ですか。わたしにいじわるしているのは、だれなんですか。がんばって、べんきょうしますから、わたしを学校に行かせてください。

ありがとうございました。

山田萌々華

 

 

■萌々香さんの作文を受けての意見交換

内多 勝康さん(もみじの家ハウスマネージャー)

  • 萌々華さんはこの作文がきっかけでメディアに多く出演するようになった。取材にも協力して、ある意味有名になった。頑張ってくれた。メディアに出たいのではなくて、出続けることで、自分と同じ思いをしている他の子たちが学校に行けるのではないかと、社会が変わるきっかけにしたいと思っている。しかし、思いは十分には投影されていない。自分の声で訴えるのは歴史的な一日だと感じる。一日も早く、学校にいきたい思いが実現できるようにしたい。

前田 浩利 先生(医療法人財団はるたか会理事長)

  • このような場をもっていただいただけで有り難い。萌々華ちゃんの作文は何回も聞いているが、力不足で、なかなか前に進む事が出来ない現状に申し訳ないと思っている。お母さんのお話にも耳を傾けたい。

山田 美樹 さん(萌々華さんのお母様)

  • 近年の法改正により呼吸器をつけない医療的ケア児を取り巻く環境は大きく変化してきている。最近では、東京都において医療的ケア児専用車両ができた。しかし、人工呼吸器をつけた医療的ケア児を取り巻く環境は変わっていない。
  • 娘は人工呼吸器をつけてはいるが、話すことができて知的障害もない。半日ぐらいなら自発呼吸ができる。将来的に外したいがために、肺を鍛えている。呼吸器の使い方が違うのに、現状は、娘に関しては、小学校1年の頃と何も変わっていない。

 

【萌々華さんの教育の現状】

  • 私が仕事をしているので付き添えない、バスにも乗れないため通学できない。
  • 1回2時間、週3回の訪問教育を受けている。4月に先生が替わるときは新旧引き継ぎや学園祭、卒業式など、学校都合で週3回は来られない時もある。通学ならば、先生が休んでも代行授業があるが訪問教育にはそれがない。
  • 単純計算で、1年間の授業時間は232時間(上記の理由により実際はこれより少ない)また、覚えなければいけない事は増えるのに、1年生から6年生まで勉強時間は変わらない。学習指導要領では、小学4年生の授業時間は980時間が基準。国語だけで250時間。つまり、現状では、通学児童の1つの教科分も賄えていない。
  • 特別支援学校の通学には保護者の同伴が必ず必要であり、親の代わりにヘルパーを同行させることができるがすべて自費扱い。教育と福祉は一緒に受けることができない。訪問教育のときのヘルパーさんも1回5,000円の自費。通学なら、単純計算で1か月30万円近い通学なら30万近い自費がないと義務教育を受けることができない。どんな私立よりも高いお金がないと義務教育を受けられない。

 

駒崎 弘樹 さん(フローレンス代表理事)

  • この日本で義務教育を受けられない子がいる衝撃。誰しも持っている義務教育、学ぶ権利があるのに保障されていない。文科省も通知を出して、看護師を増やしても、オペレーションやルールが変わっていないので何ともできない。穴を開けるのが我々の課題。

 

小林 正幸 さん(医療的ケア児支援協議会親の部会部会長)

  • うちの息子は、重心認定があって医療的ケアも必要。学校には行けるが、耳がないので聴力が得られないため、コミュニケーション能力が得られない。
  • 子どもの学習には適正年齢があり、チャンスを逃してしまうことが問題。
    学ぶことができれば今後の環境も変わる。通知がうまく伝わるように工夫していただきたい。

2.「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議」
中間まとめ以降の論点概要と方向性について

樫原 哲哉 氏(文科省 特別支援教育課 特別支援教育企画官)

 

【重要ポイント】

  • 配付資料の内容に添って、中間まとめ以降の論点と最終まとめ(案)の説明あり。これらを踏まえて、今月中には最終報告書をまとめて新しい通知や予算に反映させる。
  • 医療的ケア児の実態は非常に多様で、重度心身障害児だけでなく立って活発に動きまわるお子さんもいる。ひとりひとりの教育的ニーズに応じた指導を行うことが必要。
    →現在8000名の医療的ケア児が存在、うち850名が小中学生。
    →人工呼吸器つけている子もおり、3分の2が訪問教育を受けている。
  • 資料:学校における医療的ケアの実施に関する検討会議最終まとめ案概要
    保護者の付き添いは真に必要な場合に限る。教育委員会と校長の関係の間に、医療関係者がいない状況で物事が決まっていた。教育委員会、学校単位に医療関係者がはいっていく体制整備を進め、人工呼吸器の管理については、モデル事業の結果も参考にし、医療関係者の助言を得つつ個々の対応していく。
  • 通知の考え方:たんの吸引などの特定行為に関して、小中学校については主として看護師、教職員がバックアップする。特定行為以外の医療ケア(人工呼吸器の管理など)に関して、「慎重に」という書き方の23年通知をもとにやらないところが多いが、モデル事業の成果も参考に、個々の事情に応じて対応する。医療関係者のいる場で検討することが重要。
  • 医行為かどうかについては、文科省から厚労省に法令照会をかける。
  • 研修機会:指導的立場にある看護師を中心に、文科省としても実施
    →自費ではなく、研修の時間と費用を手当して参加できるように。

3. 一括質疑&意見交換等

・2019 年永田町子ども未来会議の課題提起・認識共有
・心愛ちゃん虐待死事件を受けた法改正の必要性など

 

荒井

  • 最終まとめの冒頭に目的や背景の検討があるが、その中に、「医療的ケア児も教育を受ける権利がある」「実行する、実施するために」という基本的な目的と文言が必要だと思う。
  • 基本的な教育を受ける権利を助けていくのが政治や行政の役割。

文科省・樫原企画官

  • 教育をどうするんだという前提で、中間まとめにも通知にもこれまでなかった第1章を新たに書いた。検討会の委員の総意として、人工呼吸器の子ならイコール訪問教育ではないという思いを込めた。一人一人の教育的ニーズに応じた指導を行うことが必要であり、教育委員会が担当者を決めること、指導的立場の看護師を決めることから、一歩一歩。
  • 萌々華ちゃんの通学問題は、都教委や、地元の教育委員会とも話をしている。
    東京都としてもいろんなことを考えており(予算メニューを考えている)、教育委員会とコミュニケーションをとっていく。

前田先生

  • これをやれば、萌々華ちゃんが今度の4月からは学校にいけるかというと難しい。都立光明特別支援学校と、目黒区立碑小学校の2つの学校が変わらないと行けない。大きく国を動かしている人と地域で子どもをみている私たちとの間にずれがある。実際に、萌々華ちゃんが学校に行けるようにするようにつなぐことが必要。
  • 小児科学会や小児科医の間の実感値として、学校の看護師には医者の指示書は通用しない。吸引圧ひとつ、チューブの長さひとつ聞いてもらえない。主治医の指示書が地球上で通用しない場所が学校現場。

西崎つばさ・目黒区議

  • 山田さんのケースも行政担当課長とお話をしているが、現場のギャップの大きさを目黒の課長とのやりとりで実感。心はある、何とかしてあげたい気持ちはあるが、都教委、目黒教育委員会がこうならないとどうしようもないというのが現状。どう突破するか。

山本参議院議員

  • 目黒区長や、公明党の地方議員もお宅に伺って話しを聞いた。国の制度、東京都と目黒区の教育委員会が連携して進めていくしかない。この未来会議も今回で22回目となった。荒井先生や、野田先生を中心に一歩一歩前に進めて、法改正や報酬改定も実現してきたが、まだまだ学校似通いたいのに通えない課題がある。行政含めて関係者の方と協力しあって努力を続ける。

 

【資料】
01_第22回永田町子ども未来会議
02_もみじの家ニュースレターカバー面
03_もみじの家ニュースレター中面学校に行けないのはなぜ山田美樹萌々華
文科資料①学校における医療的ケアの実施に関する検討会議最終まとめ案概要
文科資料②学校における医療的ケアの実施に関する検討会議最終まとめ案本文
文科資料③特別支援学校等における医療的ケアの今後の対応について
文科資料④切れ目ない支援体制整備充実事業

以上