2018.11.20. 第21回永田町子ども未来会議(平成30年度障害福祉報酬改定実施後の影響分析)

今年4月に実施された障害福祉報酬改定から半年以上が経過し、改定の結果、実際にどのような影響があらわれ始めているのか、懸案であった看護師配置加算はどの程度の事業所で取れているのかを検証する回となりました。

資料として提示された厚労省の『平成30年度障害福祉サービス等報酬改定について(医療的ケア児関連)』の4ページによれば、看護師加配加算をとれた事業所は数%に留まることがわかります。

当日の体調次第では欠席となることも多い医療的ケア児の状況が十分に加味されておらず、当初から加算要件が厳しすぎるという指摘が現実のものとなっています。日本で唯一の障害児専門保育ヘレンでさえ、加算が全く取れないという状況がフローレンスの駒崎さんより示されました。赤字覚悟で先進的に医療的ケア児を受け入れてきた良質な事業者にさえ加算が取得できない要件では、全国で新たに医療的ケア児を受け入れようという事業者の参入インセンティブにはなり得ていません。

やはり既存の枠組みに無理に入れようとするのではなく、次回2021年度の障害福祉報酬改定に向けて、大島分類に変わる新判定基準の確立と、それに基づく医療的ケア児の新しい報酬体系を抜本的に見直す重要性について、多くの参加者の意見が一致しました。

○看護師加配加算の取得状況(障害児通所施設)

・児童発達支援(5,834事業所中)

看護師加配加算Ⅰ 234事業所  ≒ 4%
看護師加配加算Ⅱ  20事業所  ≒ 0.3%

・放課後等デイサービス(12,535事業所)

看護師加配加算Ⅰ 258事業所  ≒ 2%
看護師加配加算Ⅱ  18事業所  ≒ 0.1%

■主なテーマと議論のポイント(詳細は添付資料をご覧ください)

1. 平成30年度障害福祉報酬改定後の影響分析・報告

①改定後の現状分析・今後の課題等 
山口 正行 氏(厚労省障害福祉課 障害児・発達障害者支援室長)

・配布資料の内容に添った説明

②事業所側からみた実態分析・見解について
戸枝 陽基 氏(社会福祉法人むそうNPO法人ふわり理事長)

  • 平成30年度はトリプル改定の年だったが、おもに重症児のデイサービスの加算はほとんどない。
  • 東京では、都庁が特別加算をつけている。国の報酬が上がったというので、都加算を下げたいと実状の問い合わせがあった。実際には、むそうでは50円しかあがっていないと伝えると、都加算はそのまま継続されている。立ち上がる医療的ケア児の問題も安定せず、財源が潤沢な東京でしかやれない。今のままでは、他の地方では変わらない。新しい判定基準が必要。
  • 市区町村に研修を義務付けたが、せめて都道府県事務にすべき。
  • 内閣府の委託研修によるオンデマンド研修などを考えていかないと、結果的にパイの大きな東京でしか始まらない。
  • 相談支援についても、そもそも看護師がいないと医療的ケア児の支援が始まらない。
  • 永田町子ども未来会議でも乳児院視察をして頂いたが、社会的養護が必要な事例がかなりある。家族がない医療的ケア児の住まいや行き先についてはまったく制度がない。特に乳児院の方たちは悲鳴をあげている。

 

2. 居宅訪問型保育事業における医療的ケア児の日割問題

①現状報告:西川 隆久 氏(内閣府 子ども・子育て本部参事官)

・日割り問題については、事業者の参入意欲を刺激するように報酬の支払い方法を検討中。審議会が今週木曜に開かれる。

・議論の方向性として、健常児のお子さんは週6日でお支払いしているが、

医療的ケア児のお子さんは日割計算のため、かなり減額される方向になっているので、減額の幅を少なくするよう、年末までの予算編成過程のなかで措置できるように進めている。

②問題提起:駒崎  弘樹 氏(認定NPOフローレンス代表)

  • 日割りではなく緩やかな減算の方向で近々発表と聞いている。納得がいく。
  • 居宅訪問型児発のお子さんには、週2日の壁がある。今日の前田先生の資料にお手紙がある山田ももかちゃんは、訪問教育で、1回2時間、週3日。
  • 厚労省の配布資料によれば、看護師加配事業 250/5200  5%弱。放デイだとわずか2%弱とハードルが高い。フローレンスもまったく加配を取れていない。次回への課題が明示化された
  • 文科省の看護師配置事業では毎年のように定員が大幅増員されているが、看護師がいても、看護師が増えても、親が同伴してくださいというルール。現場が変わっていない。オペレーションのフローをなんとか変えられるように。フローレンスでは医療的ケア児を受け入れたいという新規参入の事業者のために、ノウハウをすべてフルオープンで提供しているが、子どものための対策を具体的にやっていくことを目的にしている。

3. 学校における医療的ケアを巡る諸問題

前田  浩利 先生(医療法人財団はるたか会理事長)

配付資料:学校に行きたいという2人の子どもたちの手紙を読み上げ紹介

  • 論語や「君たちはどう生きるか」読んで、分数の割り算をできる9歳の男児に、「三匹のこぶた」を読み聞かせている。特別支援学校はわかってくれないので、学校ではわからないふりをしている。
  • 山田ももかちゃんは、学校に行きたい一心でマスコミに出続けている。2年前にNHKにも出たのに、まだ学校に行けておらず訪問級も増えていない。往診に行くのがいくたびに辛い。先生、なにやってるのと言われる。お母さんは、公務員で共働きでないと生活ができない。切実。
  • 学校問題とは、親御さんの付き添いの問題ではない。子どもたちの問題だ。学びたい子どもが学べない、勉強させてあげられない現状を重く考えないと。長年取り組んできたが、東京の先進校ですら、この現実が変わっていないのが切ない。

4. 一括質疑&意見交換

◯荒井

いまの状況で今後、どのぐらい看護師配置加算が伸びるのかの見通しについて、厚労省。学校の付き添い問題について、文科省。それぞれ見解を。

◯山口室長(厚労省)

まだ6月の数字が出てきたばかりで、新報酬から3ヶ月分のデータしかないので、いまの段階で見通しは難しい面がある。個別には、地方の事業所で、今回の改定の医療連携体制加算では助かりましたという声もある。

加算算定ができないネックの把握をしていきながら、あと1年ぐらいは経過を見ていきながら、現状を出しながら議論をしていく。

◯樫原室長(文科省)

「学校における医療的ケアの実施に関する検討会」の中間まとめで、付き添いに関しては必要最低限の原則を示した。学校における岩盤規制という話があったが、規制はむしろ存在しない。訪看も委託可能になっている。

規制がないので、逆に学校の設置者の判断に大きく左右される。

課題認識はある。各都道府県で、医療の関係者も入れて医療的ケアの協議会をつくってみてくださいと呼びかけるが、県によっては学校関係者のみ。医療的には責任を取りにくいのでリスクを回避しがち。

◯野田議員

我が家では、残念な話がある。改定によって、放課後デーが利用できなくなった。常勤看護師が難しいため、これまではボランティアで足りない分をサポートしていたが、要件が厳格になったが故に、できなくなった。港区では唯一の先進施設だったのに、逆行している。わずかな金額のために柔軟性がなくなっていることを危惧。建設的な取り組みとの対応に齟齬が生じている。医行為について、運用で大丈夫といっても教育現場では絶対にダメ。根本を法律で変えなければ。看護師不足の問題はあるが、看護師といっても全員が医療的ケアをできるわけではない。正直、看護師の人件費は高い。施設で抱えこめない。看護師は病院で働きたい。学校看護師は二軍のイメージ。

◯山本議員

報酬改定によって、現実的にはなかなか進展していない。

本当は3年に1回の改定だが、来年の3月までに検証して、主要なところに調査していくと聞く。医療的ケアの報酬改定はそこに入っているのか?

3年後ではなくてデータ見直しを正面から考えられるのか?

○内多(もみじの家ハウスマネージャー)

自治体のルールとして、インクルーシブが義務付けられると、

首長が変わっても継承される。医療的ケア児の通学ができないことに裁判提訴も起きている。

○小林 氏(親の会部会長)

卒業後の進路問題も手つかず。看護師不足で修学旅行にも行けない。

看護師配置の文科省予算はあるが、人的資源がない。

医療的ケアのための学校での配置はワンランク下のように

すべての看護師がNICU経験ではないから医療的ケアができないという考えが

欠落しているのではないか

○木村議員

特別支援学校等で実習する機会がないとイメージがわかず、ハードルが高いように感じてしまう。未来会議が始まって以来、厚労省文科省ともに基礎実習のプログラムに入れて欲しいと要請している。NICUの経験がないから抵抗がある点は、研修等で進めていけるが、近くに医師がいないという働き方のイメージがわかないので、基礎教育の部分をしっかりと。

◯野田議員

地方自治の大切さはわかるが、相当ひどい。そんなに格差をつくっていいのか、教育に関してはある程度、国がコミットしてスタンダードを持たないとダメじゃないか。

以上

【資料】
第21回永田町子ども未来会議次第
資料H30年度障害福祉報酬改定後の影響分析(戸枝氏)
医療的ケア児からのお手紙(前田先生)
厚労省平成30年度障害福祉サービス等報酬改定について医療的ケア児関連