2020.10.30. 第31回永田町子ども未来会議-法案公表

2020年10月30日、超党派の「永田町こども未来会議」の5年に及ぶ議論の結晶、「医療的ケア児支援法案(仮)」を公表しました。会議の内容をご報告します。

会議動画・会見の様子は、アーカイブをご覧いただけます。

配布資料一覧
01_第31回永田町子ども未来会議次第
02_要綱骨子医療的ケア児支援法案
03_うた君未来会議
04_医療型短期入所に関する実態調査
04_医療型短期入所拡充のための要望書と補足資料
04_日中活動の効果
05_厚労省_子ども未来会議令和3年度障害報酬改定進捗状況
05_厚労省_子ども未来会議概算要求
06_文科_医ケア関係令和3年度概算要求資料

1. 冒頭あいさつ

荒井:フローレンスの 保育園視察で野田聖子先生のご子息に会ったことをきっかけに、厚労省と文科省の幹部が協力してくれて、永田町子ども未来会議が発足。2016年に障害者総合支援法の中に初めて『医療的ケア児』という概念を導入、報酬改定を行った。しかし、必ずしも医療的ケア児の皆さんにとって満足いくレベルとは言えない。

現在、法案要綱の最終段階。何とか、今国会で議員立法を委員長提案で成立させたい。(そうすれば)来年度予算案に反映できる。医療的ケア児に関してひとつの未来が見えてくる。

この間、新スコアを定義した前田先生はじめ、多くのみなさんに大きな貢献をいただき、厚労省、文科省、総務省が来年の予算の検討に入っていると聞いている。中身について法制局から説明いただく。全体を取りまとめる法案で、議員立法として作られて初めて大きな形の体制が出来上がる。

野田議員:今日は法案はもちろん、同時に私の憧れのうた君にもきていただいた。息子と病院が一緒で時々お目にかかる。彼は、将来の日本を担う素晴らしい人材だとかたく信じている。うた君とのセッションのなかで、医療的ケア児に対する理解をし、無知を払拭してほしい。彼をこの国を担う人として育てるために、我々ができることは、法律を作り、予算を作ること、制度を運用していくことなど色々なことを歩み出していただきたい。

 

2. 医療的ケア児支援法案(仮)要綱の公表・説明

中谷 幸司 氏 衆議院法制局 第五部第二課長 

中谷法制局課長:9月に開催された前回の永田町子ども未来会議で、皆さんからいただいた指摘を反映させたもの。要綱骨子案は大きく分けて4つのパートに分かれている。1つ目が、総則。2つ目が支援のための施策。3つ目がセンターについての規定。4つ目がその他事項。

第一に、総則の規定に目的を掲げている。医療的ケア児が心身ともに健やかに成長することができる社会を実現すること、そしてご家族の離職の防止に資すること、安心して子どもを産み育てることができる社会の実現を目的としている。

資料の赤字は、前回の会議で舩後先生と高木先生からの、『目的規定において医療的ケア児本人の幸福に言及することが必要ではないか』との意見を踏まえた修文。

2つ目に定義。医療的ケア児とは、医療的ケアを受ける児童等。医療的ケアとは、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為であってその対象となる者が日常生活および社会生活を営むために日常的に受ける必要がある者をいうこと。そして児童等として、18歳未満の方、及び18歳以上の方々であって高等学校までに在籍する人を想定。

基本理念として、5つの柱。
1、日常生活及び社会生活における切れ目のない支援
2、どこに居住していても適切な支援を受けられること
3、個々の医療的ケア児の状況に応じた、関係機関等の連携の 下の支援
4、児童等でなくなった後にも接続したシームレスな支援
5、医療的ケア児とその保護者の意思の尊重

続いて責務規定
1、国の責務 :国は、基本理念にのっとり、医療的ケア児及びその家族に 対する支援の拡充を図るために必要な措置を講ずる責務を有 すること。

2、地方公共団体の責務 :地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図り 2 つつ、主体的に医療的ケア児及びその家族に対する支援を実 施する責務を有すること。 

3、保育所等及び学校の設置者等の責務
①保育所等及び学校の設置者等の責務 :基本理念にのっ とり、その設置する保育所若しくは認定こども園に在籍 し、又は家庭的保育事業等を利用する医療的ケア児に対 し、適切に支援を実施する責務を有すること。
②学校(学校教育法第1条に規定する学校:基 本理念にのっとり、その設置する学校に在籍する医療的ケ ア児に対し、適切に支援を実施する責務を有すること。
③放課後児童健全育成事業を行う者:放課後児童健全育成事業を行う者は、基本理念にのっと り、当該放課後児童健全育成事業を利用する医療的ケア児 に対し、適切に支援を実施する責務を有すること。 

加えて法制上の措置として、政府はこの法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないこととしている。

次に2つ目のパート。医療的ケア児及びその家族に対する支援のための施策 

1、日常生活の支援 :国及び地方公共団体は、医療、保健、福祉、教育、労働等に 関する業務を行う関係機関及び民間団体の連携の下、医療的ケ ア児及びその家族が日常生活において適切な支援を受けられる ようにするために必要な措置を講ずるものとすること。 

2、保育所等における医療的ケアの実施 :①国及び地方公共団体は、医療的ケア児に対して保育を行う 体制の拡充が図られるよう、子ども・子育て支援法の仕事・ 子育て両立支援事業の在り方についての検討、医療的ケア児に対する保育を行う保育所等に対する支援その他の必要な措 置を講ずるものとすること。②保育所の設置者、認定こども園の設置者及び家庭的保育事 業等を営む者は、その設置する保育所若しくは認定こども園 に在籍し、又は家庭的保育事業等を利用する医療的ケア児が 適切な医療的ケアを受けられるようにするため、医療的ケア を行う看護師等又は保育士の配置その他の必要な措置を講ず るものとすること。 

3、学校等における医療的ケアの実施 :①国及び地方公共団体は、医療的ケア児に対して教育を行う 体制の拡充が図られるよう、医療的ケア児に対する教育を行 う学校に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする こと。 *②学校の設置者は、その設置する学校に在籍する医療的ケア 児が保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアを受けられ るようにするため、医療的ケアを行う看護師等の配置その他 の必要な措置を講ずるものとすること。 *国及び地方公共団体は、2の医療的ケアを行う看護師等の ほかに学校において医療的ケアを行う人材の確保を図るた め、喀痰の吸引等を行うことができる介護福祉士等を学校に 配置するための環境の整備その他の必要な措置を講ずるもの とすること。 ④放課後児童健全育成事業を行う者は、当該放課後児童健全 育成事業を利用する医療的ケア児が適切な医療的ケアを受け られるようにするため、医療的ケアを行う看護師等の配置そ の他の必要な措置を講ずるものとすること。 

(*②は前回の会議での舩後議員の意見を踏まえ、目指すべき方向性として、保護者の付き添いをなくすと明示。)

(*③は前回の会議での山本議員の意見を踏まえ、措置の目的の部分を看護師の他、医療的ケアを行う人材と変更。)

4、医療的ケアを行う人材の確保 :国及び地方公共団体は、医療的ケア児に対し医療的ケアを行うことができる人材を確保するため必要な措置を講ずるものとすること。 

5、相談体制の整備 :国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族その他の 関係者からの各種の相談に対し、個々の医療的ケア児の特性に 配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするため、医 療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及 び民間団体相互の有機的連携の下に必要な相談体制の整備を行 うものとすること。 

6、情報の共有の促進 :国及び地方公共団体は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、 医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関 及び民間団体が相互に連携を図りつつ行う医療的ケア児に対す る支援に資する情報の共有を促進するため必要な措置を講ずる ものとすること。

7、国民に対する広報啓発 :国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族に関する 課題に関する国民の理解を深めるため、学校、地域、家庭、職 域その他の様々な場を通じて、必要な広報その他の啓発活動を 行うものとすること。(*先の会議での宮路先生の意見を踏まえて。)

8、研究開発の推進 :国及び地方公共団体は、医療的ケアを行うために用いられる 医療機器の研究開発その他医療的ケア児の支援のために必要な 調査研究が推進されるよう必要な措置を講ずるものとするこ と。 (*前回会議での山本議員の意見を踏まえて。)

第3のパートとして、医療的ケア児支援センター(仮称)について。

都道府県知事は、社会福祉法人その他の法人であって当該業務を適切かつ確実に行うことができると認めて指定したものに業務を行わせ、又は自ら行うことができるとしている。

想定される3つの業務:①医療的ケア児及びその家族その他の関係者に対し、専門的 に、その相談に応じ、又は情報の提供若しくは助言その他の 支援を行うこと。②医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係 機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し医療的ケア についての情報の提供及び研修を行うこと。③医療的ケア児(医療的ケア児であった者を含む。)及びそ の家族に対する支援に関して、医療、保健、福祉、教育、労 働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整 を行うこと。 

その他の検討事項は、①施行期日等、②この法律の施行後3年ごとにこの法律の実施状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする、*③災害時における医療的ケア児に対する支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

(*前回の山本議員からの意見を踏まえ、災害時においても医療的ケア児が適切なケアを受けられるよう政府に検討を促す内容とした。)

○質疑

荒井:厚労と文科には随分と図っているが、総務省についてはこの法案内容についてあまり説明していなかった。新田さん、何かありますか。

新田課長:拝見して特に大きな問題はないと受け止めている。この法律が実際に動くにあたって財政措置等々、財政基盤が重要だと思う。その点についてはこの法案の状況を踏まえて努力していきたい。

荒井:支援をする主体は地方自治体が多い。財政基盤については地方自治体からも様々な意見が出て来ると思う。新田課長のところで対応をしていただきたい。よろしくお願いします。施設を運営する方の立場からはどうか。

戸枝 氏:感謝しかない。今まで医療的ケア児本人やその家族がお願いにいっても責務がはっきりしていないので、いなかった人のように「何もありません」と言われることがずっと続いてきた。これが法案として通れば行政の責務や国の責務がはっきりするので、祈るような気持ち。よろしくお願いします。

駒崎 氏:私からも最大限の感謝を申し上げたい。6年間の歩みが集大成としてここに結晶化されたと感じる。まさにこの法案が恐らく史上初の医療的ケア児家庭のための法案。史上初の挑戦が実現することを願っている。民間からもバックアップしたい。

小林 氏:医療的ケア児者の想いが固まって、これまで積み重ねてきたことがこうやって形になったことに感謝。親の会でも関心が非常に強く、議論したいと言う意見もいろいろあった。ぜひこの法案を通していただき、シームレスな支援で医ケア児が成長して医ケア者と育ち、社会の中で生きていくことができるよう支援を拡充して欲しい。

木村議員:最初から関わってきて、やっと医療的ケア児という言葉が記名され、医療と保育と福祉を融合して考えていけるようになったことが第一歩で、それからこうやって独自の法律ができることが感無量。全国に1万7千人以上いると言われる医療的ケア児とその家族、関係者の皆様に周知したい。(※2020年現在、18,000人)そして実務を伴うものであるように力を入れていきたい。

今井議員:新参者だが医療的ケア児のご家族の方、そしてお子さん達とこれまで触れ合う機会もたくさんあった。そういう子たちにきちんと寄り添えるようなそして木村先生がおっしゃっていたように医療、教育、福祉の支援が切れ目なくその子たち届くようなそういった社会を目指して私も頑張っていきたい。

荒井:障害者支援法の中で厚労委員会で質疑に立った時に、黙って野田聖子さんの息子さんの写真を見せながら、医療的ケア児っていうのはこういう人のこと言うのだとみんなに見せた。その時、児童ポルノじゃないかと言う人さえいた。医療的ケア児は、お腹見せないと(胃瘻であることが)わからない。それから(気管切開していることは)喉を見せないと医療的ケア児ってわからない。医療的ケア児という言葉が普通名詞じゃなかった。45名の専門の厚生労働委員会に所属する委員ですら、その人たちの間でも初めて聞くという状況の中で委員会質疑をしたと言う覚えがある。

前田先生:医療が進歩する最前線で30年間、こういった医療的ケア児をたくさん作ってきた側として、子どもたちに報いたいと言う気持ちがあってこの活動をやらせていただいていた。多くの人に、特に先生方の支援を受けて、この法律ができてちょっと涙が出そうなくらいうれしく思っている。この時点で入れていただくことができるとしたら1つ。家族の支援、4ページのところ。その施策のところに。医療的ケア児は移動する支援がすごく得にくくて、ものすごく大変。「移動の支援」をはっきりとしっかり入れていただくというのがあるのかなと思う。今日は私の患者のうたくんも来ています。彼も「仕事をしたい」と明確。医療的ケア児の中からは、大人になって仕事をしていく人たちが出てくる。その就労支援をしっかりとし、「社会に貢献する一人ひとりとして育てあげていく」と明確にうたわれたらいいと思う。それ以外ほんとに全体としては涙が出るくらいありがたい。

3. 医療的ケア児の願い&法案エール

 特別ゲスト/医療的ケアの必要な小学生男児 うた君(東京都在住) 

前田先生:うた君は1歳の頃から私どもが診療している。病気はミオパチーと言う筋肉がうまく働かない病気。脳の機能や頭の知的な問題は一切ないにもかかわらずずっと人工呼吸器をつけないと生きていけない。なかなか飲み込むのが難しいので胃ろうで飲み込んでいると言う状態。


↑うた君。11歳、小学校5年生。

こういったお子さんは私たちが小児科医になった当初は、入退院を繰り返して大変辛い思いをしていた。医療的には特に脳に障害は無いはずなのに、いろんなことを表現するお子さんはほんとに稀。うた君は1.2歳の頃まで大変苦労したが、その後すごく順調。ほとんど苦しい思いをせずに入院もあまりせずに育った。そのかわりすごく精神的に、知的に驚くべき成長した。

↑普段から担当している看護師の山岸さん(右)に手伝ってもらいながら、わずかな筋肉の動きでiPadを操作し、メッセージを打つうた君。

うた君:今日はよろしくお願いします。

うた君のメッセージ看護師の山岸さんによる読み上げ。

皆さんはじめまして、小学5年生のうたと申します。支援学校に週3回通っています。その3回も朝、車の手配やヘルパーさん、お母さんがいて初めて学校に通えます。あと、副籍は普通小学校にエレベーターがついたため小学校4年から通うことができます。家で勉強したら楽しくて、思っていたよりも勉強ができたからです。ママがYouTubeで勝手に勉強法を教えだしたんです。そしたら低学年なのに小学校6年生の算数ができました。今までは考えてもつまらなかったけど、謎解きみたいだし勉強しだしたら将来やりたいことができました。しかし月に行けても1度です。両親がともにないと荷物や抱えなど、自分たちで全部自分たちでやることが条件だし、教科書も自分たちで探して自費で買い揃えました。近くの普通小学校では、はじめての時は受け入れてもらえるか心配でしたが僕のことを受け入れてくれる友達もいました。みんな僕と同じ5年生です。楽しくて通いたくなりました。勉強はついていけるか心配でしたが、僕の頭を理解してくれる友達はうたくんの感想がいいよとか、なんでここまでわかるのとか言われて自宅でお母さんとお父さんに勉強教えてもらっていてよかったなぁうれしいなぁと思いました。ここに来ている皆さん、どうか未来ある子ども達が義務教育を受ける権利を叶えてください。僕は将来やりたいこともかなえたい未来もあります。将来は前田先生と僕のような子どもたちの未来を良くしていく仕事がしたい。あと僕は本を書きたい。そこに画家にもなって絵を載せていろんなことで悩んでいる人たちの心のよりどころにしたいと思います。ここにいる皆さんに言いたいです。子どもからのお願いです。有言実行してください。よろしくお願いします。

↑うた君が小学校にあがる頃に会って以来の再会で、うた君の成長に感無量の高木議員。

 

↑質問を受けて応えるうた君と、文字盤を打つのが一番早いということでサポートするお母さん。今井議員の「好きな勉強と好きなことは?」という質問に、「英語、本当は数学、そして理科。ろうそくの科学を読んだり、哲学が好き。それから、落合陽一さんの本を読んでいます。将来は前田先生の弟子になるため、日々精進しています」と回答。

荒井:前田先生のような仕事も大事だけど、このように子どもたちの未来を作っていくのは今話をした上久保くんや、あるいは厚労省の河村さんとか、後藤さんとか、あるいは政治家になってもいいよ。大きな夢を持ってください。ありがとうございます。

4. 医療型短期入所施設に関する2021年度障害福祉報酬改定への要望

内多 勝康 氏 国立成育医療研究センター「もみじの家」ハウスマネージャー(オンライン登壇)

昨年度、厚生労働省の事業で実施されました調査で、全国の事業者が置かれている事業を把握することが可能になった。

調査結果は移動型短期入所充足感を示したものだが、「医療型短期入所については充足していない」と感じているのは、事業所では85%。自治体の回答では95%近くを占めている。足りないと言う認識がほとんど。

利用者が医療的短期入所の利用を断られた理由として、「空きがない」と言う理由が7割近く。これが現状。

どうして施設が充足しないのか、足りないのか。やはり報酬の問題が大きく関わってくると認識。収支が安定してくればこうした事業に参入する医療機関も増えるのではないかと期待している。

超重症児者、準超重症児者の受け入れについて、もっと報酬で評価してほしいという意見が6割近く。

医療依存度の高い子を受け入れる短期入所に対して、特別重度加算というのがあるが、例えば人工呼吸器をつけたようなお子さんを入浴させる際は、呼吸器からバギングに切り替えて、その呼吸を管理する看護師。そして、お子さんの体を洗いやすいように体位を変える看護師さん。実際に洗うスタッフと時に、計3人がかりになる。その人件費に対して今の特別重度加算が十分ではないと言う認識が多くあるのがこの調査で明らかになった。

基本方針に加えて医療依存度の高いお子さんを入所で受ける際にどれぐらいの経費が必要かと言う試算については、日本重症心身福祉協会が試算をしている。少なくとも医療依存度の高い人が入所する病棟においては1人1日あたり43,400円が必要。現在の制度では、医療型短期入所サービス費1と言うカテゴリーに特別重度加算1と言う最も高い加算を加えても、東京23区ではおよそ36,900円にとどまる。

いわゆる動ける医療的ケア児への対応。

かねてより制度の挟間におかれ、障害福祉サービスが利用できないと言う課題が指摘されている。

(利用者の障害特性による受け入れ状況についての調査データによると)重症心身障害児者や医療依存度の高い超重症児、準超重症児者については受け入れ不可としている施設は10%前後。強度行動障害や動ける医療的ケア児者、つまり見守りが常時必要な医療者については受け入れ不可としているところが半数以上。「人数制限あり」と答えたところを加えると、7割近く。動ける医療的ケア児者を、短期入所の対象としている自治体は5%。7割の自治体では利用者の個別ケースに応じて判断しているのが現実。

つまり位置づけが曖昧になっているために、サービス利用がかなうかどうかは、自治体や事業者の判断によって左右されている。

医療型短期入所の受け入れのインセンティブとなるように、動ける医療的ケア児者が医療報酬の高い医療型短期入所サービスの対象としての明確な位置づけと、特別重度支援加算の算定要件から、運動機能が座位までと条件があるので、これを削除することで動ける医療的ケア児者についても特別重度加算の対象とすることが必要かなと思う。新しい判定スコアでは見守り度をしっかりと評価して、事業者へのメリットとなる流れができていると思うので、短期入所での評価について動ける医療的ケア児者をはじめ、見守り度が高い医療者に対する視点をもって頂ければ嬉しい。

 

遊びや学びの活動それからリハビリなどの日中活動についての新たな評価。

医療型短期入所の利用中の遊びや学びの充足度が、医療的ケア児のQOLの上昇に寄与することが明らかに。ただ日中活動においては現在、明確な評価基準がない。調査では、日中活動と書いているところ以外はそれぞれの項目で満足、まあ満足を合わせると85%以上満足度はあるが、日中活動では満足ではない、あまり満足ではないと答えた方が35%に上る。

お子さんが楽しくに過ごすことによって、親御さんが安心してお子さんを預けることができる。肉体的にも精神的にも非常にレスパイトできる。お子さんを預けることに前向きになれる。ゆくゆくは親御さんもまた社会参加が可能になる。そのためにも、日中活動は非常に重要。

日中活動の充実には、有資格者の常勤の採用が必要。

利用者の成長発達、健康維持を評価する基準を新たに作っていただきたい。次期報酬改定においてこの仕組みの新設を強く希望している。

不足している職種は、やはり看護師が9割以上で不足。制度と施設ができても、ケアの担い手が足りなければハコだけできて受け入れが進まない。制度改定と同時に医療的ケアの担い手の拡充のための議論が必要。

 

 

5. 2021年度障害福祉報酬改定の検討状況について 

河村 のり子 氏 厚労省 障害児・発達障害者支援室長
後藤 友美 氏 同 医療的ケア児支援専門官 

冒頭で申し上げるのが大変恐縮だが、令和3年度の報酬改定については、日本全体としてコロナ禍の中で経済状況が大変冷え込んでおり、全体的な改定の状況としては相当厳しいものになると考えている。そのような中でも、新スコアができたことによって、対象者の範囲がはっきりと画せ、かつその方々がどれぐらいの医療濃度を必要としているのか、客観的な数字として評価ができるようになったというのは大きな前進。

論点1:医療的ケア児対する評価。障害児入所支援という未就学、0 から6歳までのお子さんが利用する「児童発達支援」というサービスと、小学校就学後の年齢層のお子さんが学校の後に使っている「放課後デイサービス」の2つについて。医療的ケア児の子どもの数は直近の10年で2倍、今2万人を突破。先生方のご尽力による医療的ケア児の判定基準ができてきた状況。(2ページ)

論点2:今の報酬の算定については重症心身障害児とそれ以外、重心児であるかそれ以外と、2分類。そこに前田先生たちにご尽力いただいた新スコアの判定基準を使い、医療的ケア児という区分を新たに創設する方向で考えている。医療的ケア児の区分の中でも、新スコアを使って医療依存度の高いお子さんから低いお子さんまで段階的な評価を行うことによって、たくさんの手を必要とするお子さんに厚い支援ができないかと言う方向で検討中。(2ページ)

医療的ケア児の大きな課題として、動ける元気なお子さんほど管を抜いてしまうなど、高い見守りを必要とすることを含め、医療と見守りの量を含めたスコアとして判定。(4ページ、新スコアの新旧比較表)

30年度の報酬改定で看護職員の加配で配置をし、なるべく多くの事業所で医療的ケア児を見られるようにと点数を作ったが、実際には児童発達支援が3.9%、放課後デイサービスの1.3%と、なかなか広まらない。

今までだと完全に一人以上の支援量がないと算定ができなかったところを、例えば0点いくつ(1未満)の数字でも、加算算定できるようにやっていけないか。それによって身近な地域でそのお子さんしか医療的ケアを必要とするお子さんがいなかった場合でも、看護師の配置をして受け入れると言うことが広がっていかないか。(6ページ)

重心型の事業所の算定要件も、今までは8点という高い医療濃度を必要とするお子さんが最低5人以上という基準だった。高いお子さんがいれば、そのお子さん以外が低くても合計クリアすれば算定できる方向にもっていこうと考えている。(7ページ)

論点3:本来はNICUからの退院後、すぐに障害福祉サービスを使うことが可能だが、運用できていない。退院直後こそ、親御さんは非常に少ない睡眠時間の中で緊張しながらお子さんの医療的ケアを行っている。

(使ってもらえるように)自治体には職員に5領域11項目の調査を行い、給付決定してもらっている。自治体職員では、医療的ケアを必要とするお子さんの外側から分からない障害について、しかも赤ちゃんなので、介助を要する状態が普通は障害がない場合も介助を要するようなのか、それとも内部障害によって通常の発達を超える介助を必要としているのか判定が難しく、なかなか進まなかった。それについても新スコアの判断基準を活用、給付決定をできないか考えている。

療養介護(9ページ以降)は、大人の方が入院をされている方についての、障害福祉からの募集。対象要件について、実は先ほどまで議論いただいた医療型のショートステイの対象者についてほぼ準用されている形で、行動障害がある医療的ケア児がもらいやすいように広げていくと改定を、療養介護の短期療養者と合わせて行う方向で検討。

短期入所。現状と課題は内多さんから指摘をいただいた点。点数として不足していると指摘された特別重度支援加算の算定要件の単価等について見直し可能か考えている。ショートステイを利用している期間内の日中活動についても評価をし、報酬に持っていけないかと議論している。(14ページ)

6. 医療的ケア分野に関する来年度概算要求説明

河 村 のり子 氏 厚労省 障害児・発達障害者支援室長
佐々木 邦彦 氏 文科省 特別支援教育課 特別支援教育企画官 

河村室長:医療的ケア児等総合支援事業は、市町村実施の医療的ケア児の支援の中心的事項。(2ページ)主に医療的ケア児の支援のコーディネーターの配置や自治体によって協議の場の設置の経費をみている。3年度、こちらを拡充した形で要求予定。

医療的ケア児保育支援モデル事業、保育所等で医療的ケア児のケアを可能にするための環境整備の取り組み。医療的ケア児保育支援者と言うスーパーバイズできる方を基幹施設の配置、保育所にアドバイスをしていくと言うような事業の経費。こちらも拡充して要求。(3ページ)

児童クラブでの障害児の受け入れに伴う補助の詳細。(5ページ)必要な看護職員の配置に関する経費補助について記載。在宅医療の関係人材養成事業の(6ページ)趣旨は、地域で在宅医療を担う人材育成をしていくための、地域でのスーパーバイーザー役となる高度人材の養成。なかでも②の小児向けの在宅医療、③の訪問看護について、国が研修プログラムの開発を行い、研究を積んだ団体役員に対して国が中央研修を行い、それを地方に持ち帰り、地元に伝達していく制度。それについても要求。

佐々木企画官(文科省):医療的ケア関連では、この(切れ目のない支援体制整備充実事業)事業全体で25億の要求をしている。医療的ケア児のための看護師外部専門家の配置と、学校における医療的ケアの環境整備、充実を図るために看護師配置を、今年度2,100人だったところを2,400人と300人拡充の要求をした。

会議の提言でもあった通り、小中学校における医療的ケア児の増加状況は、数字としても1,160億円と大幅増。これを踏まえて中学校区に医療的ケアの実施拠点と言うものを設けるなどして地域の小中学校で医療的ケア児を受け入れる、あるいは支える体制の在り方を調査研究する事業の予算要求をさせていただいている(学校における医療的ケア児実施体制充実事業)。いろいろな実施パターンがある。例えば実施の拠点校を1つ設けてそこから、看護師の巡回で他の小学校へ行くパターン。1つの学校を拠点校として集約拠点的な形で運営してそこに通ってもらうパターン。学校選択制を活用することになるが、そういった色々なパターンがある。5か所で要求、いろいろなケースを積み重ねていきたい。

Ⅱは、医療的ケア児に従事してもらっている看護師に対する研修機会の確保。現在まさに資料作成中。これを具体化し、研修の機会を、法人格を有する団体にお願いして実施。そのための予算要求をしている。全体としては4千万円程度となる。

○質疑

荒井:インクルーシブ教育の要請は、これからも強くなっていくと思う。その際に看護師の配置が意味を持っていくところ。約20,000人の(医療的ケア児の)半分以上が小学校中学校の義務教育の子どもたちだと思う。それに必要なトータルの看護師の数は文科省どれぐらいだと予想しているのか。

佐々木企画官:実数として医療的ケアのお子さん、特別支援学校もしくは小中学校に通っている方々の数は把握をしている。ただそのお子さんお子さんでどれぐらいの数の看護師を必要としているのか全てを把握できていない。各市町村で必要としている部分について、そこの補助事業としてきているところ。

荒井:全体のボリューム感をつかまないと、行政としての政策整備ができないのではないかと思う。モデル事業での拠点の調査ではなく、日本全体を対象にしたどれぐらいのボリュームがあるのかという調査を早急にやるべき。医療的ケア児が日本にどれぐらいいるのかも最近、明らかになってきた。6年前に私が聞いたときは、調査していませんという言う話だった。義務教育の中にどれぐらいの子どもたちがいて、それに必要な看護師がこのくらいと念頭になければ全体の政策はできないと思う。

上久保係長:特別支援には通学席で6,500人近くの医療的ケア児に対して、2,500人ぐらいの看護師が対応している。小中学校については、概ね1校1人というのが医療的ケア児の状況。今小中学校で1,000校ぐらいはあるので、1,000人ぐらい看護師がいる。小中学校に特別支援を合わせて3,500から 4,000人位の看護師が現場として今、医療的ケア児に携わっていただいているという現状の把握はしている。

荒井:それで足りるのか、足りないのか。

上久保係長:今現状としては、説明させていただいたように小中学校は1人ところでお子さんを見ていただいているというところについては、問題はないのかな、と。特別支援学校は大きいところからいうと、よくご承知頂いてると思いますが、私もいくつか見学させていただいて40人50人の医療的ケア児に対し、8人~10人の看護師で見るという状況を把握している。それで足りているのかについては検討させていただきたい。

荒井:どうもありがとう。全体的に、他に質問はありますか。

木村議員:特別支援学校を訪れて、なぜそんなに看護師に困ってないのかって話をしたら、京都市では公務員扱いをしっかりしているという話が大きかった。

荒井:最後に舩後先生からご発言があります。よろしくお願いします。

舩後議員(代読):まずはうた君へ。人工呼吸器をつけて参議院議員をしている舩後です。僕も手が麻痺してから絵をパソコンで書きました。それはワードというソフトを使いました。もし機会があったら挑戦してみて下さい。

うた君:舩後先生、こんにちは。そうですね。挑戦しないと何も変わらないですね。やるぞ。

舩後議員:ありがとうございます。人工呼吸器の当事者議員として、途中からですがこの法案の作成に関わることができ、嬉しいです。私自身も車椅子の移動には大変な思いをしています。障害者や障害児が一番幸せを感じる時は、自分で決めたことを実行できることです。この法案が法律として施行されて医療的ケアの必要なお子さんの学校生活、地域生活、未来を切り開いていくことを心から願っています。ありがとうございました。

荒井:どうもありがとうございます。今条文の作業が進行中ですが、この条文ができるのがもう1週間か10日位。それが出来上がりましたら、各党にそれぞれ説明に行って了解を得ていく。目指すのは(全会一致の)委員長提案と言う形を取りたいので、共産党も含めて了解をするということが必要。与党については、この会議には公明党の高木さんもおられましたから、大丈夫だと思います。参加されていない各党には、説明をしていく。舩後先生もお願いいたします。ある程度めどがつきましたら11月の中過ぎ位に、それぞれの省庁の大臣あるいは所管の局長のところに、この会議の議員団で陳情要請に出向く。先生方、その際にはどうぞよろしくお願いいたします。それから現在、家族会発足の準備をしております。前田先生の方からどうぞ。

前田先生:医療的ケア児の支援を行っている小児科の関係者の集まりがあります。小児在宅医療支援研究会と言う団体です。その中に家族連絡会を発足する準備をしています。全国で様々に動き始めている家族の動きを一つに繋ぎ、この法案の成立を後押ししていきたい。医療的ケア児は制度による支援が得にくく、様々な障害者者団体にバラバラに所属しているという現状。これを医療的ケアと言う共通項で1つにつないで、医療的ケア児者が生きやすい社会を作る力にしたい。

特に地方には、団体にも所属できず一体どうしたらいいのか悩んでいるお母さんたちがたくさんいる。そういったお母さんたちたちが個別に、荒井先生などに相談しているというような実態もあるようなので、その声をしっかり受け止める窓口をしっかり作って、解決の糸口を見いだせるような家族連絡会を小児在宅医療支援研究会でやっていきたい。

そして、皆様にご報告させていただきたいことがあります。実は昨日、日本医師会で全国の都道府県をつないで、小児在宅ケア検討会議というものが行われた。その会議には、日本医師会の中川会長、副会長の井口副会長もご出席いただきました。在宅医療支援の担当理事、そして小児在宅医療の担当理事の松本先生、厚労省の方、文科省も参加もいただいて、全国をつないでぜひこれを進行していこうと進めてきた。日本医師会は1つになっている。小児科学会も後押ししてくれている。医療関係者は子どもたちのためということで1つになっている。法案成立に向けて力を合わせていきたい。以上です。

荒井:それでは最後、野田さんお願いします。

野田議員:立場上、何か役所の人に圧をかけているようだが、これは正義のための法案。どうか最後まで一緒に走っていただければありがたい。全国の医療的ケア児が20,000人を超えたとのこと。何でもそうだが、調べ始めると実は思っていたよりも多いということになる。ぜひうた君が将来ノーベル賞取れるように、今からみんなで応援していきたい。今の担当の皆さんよろしくお願いいたします。

荒井:ありがとうございます。それでは今日の未来会議を終わりたいと思います。

以上。