2018.1.31.世田谷の国立成育医療研究センターと「もみじの家」見学

クローズアップ現代などでもお馴染みの元NHKの名アナウンサー、内田勝康さんのご案内で、成育医療研究センターの敷地内に一昨年オープンした「もみじの家」を見学させて頂きました。
「もみじの家」は、在宅で医療的ケアを必要とする子どもと家族を支えるための、医療型の短期入所施設です。高度医療研究病院に併設するかたちは全国でも初めての試みとして注目を集めています。


内多さんご自身も取材で訪れたことがきっかけとなり、30年勤めたNHKを退社して、「もみじの家」ハウスマネージャーとして、医療的ケア児を支えるというセカンドキャリアを決断されました。

数週間前に、永田町子ども未来会議の自民党の木村弥生議員や、厚労省・文科省らの有志メンバーらとともに、日本の周産期超高度医療を支える拠点である「国立成育医療研究センター」の産科病棟NICU・PICUや、再生医療センターも併せて見学。あらゆる医療機器の音が鳴りっぱなしの戦場のような最先端医療現場に圧倒され、NICUでは350gで産まれてきた赤ちゃんの話に驚愕。
(成育では、年間約2,200件のうち、6〜7割がハイリスク分娩)

研究センター肝いりの、状況と、将来的な小児難病への治験段階への移行について、研究者の方々から熱のこもった説明をお伺いしました。人口ミニ小腸の実物も見ることができ、新医療技術の可能性にワクワク!知的好奇心を多いに刺激されました。


同研究センターでは、まだ公式発表していないビッグプロジェクトが進行中との事。成功すればノーベル医学賞も夢ではないそうで、非常に興味深い話に期待が高まります!日本が世界に誇る先端医療分野で、研究に専心できるような環境づくりを積極的に応援していきたいと考えています。


すっかりご報告が遅くなってしまいましたが、超多忙なスケジュールを縫って、丁寧にご説明をくださった五十嵐理事長と関係各位に改めて心からの御礼を申し上げます。


■もみじの家のミッション・理念(誕生のきっかけ)
○重い病気を持つ子どもと家族のひとり一人がその人らしく生きることができる社会を創る。
○「自分たちへの医療への問い」「高度医療と在宅支援の両輪」
ー社会的な新しい支援の仕組みを全国に広げる取り組み

・成育医療研究センターは、高度専門医療を提供することが法律で決められている。7割ぐらいが合併妊娠の症例で、22週500g以下まで助けることができる反面、生存した半分の子どもは発達障害を持つ。3〜4割の確立で脳性麻痺があり、医療の進歩が医療的ケアを必要とする子どもたちを生み出している面がある。心臓の病気でもほぼ助かるが、ベット数に限りがあるので、支援が不十分なまま在宅に返さざるを得ない。(成育医療センターは、絶対に緊急搬送を断らないため平均して1週間に10〜20人が緊急搬送されてくる)

・社会から途絶されて、お母さんたちが疲弊し、仕事も辞めざるを得ない。自分たちがやってきた医療がなんなのか、人々を幸せにしたのかという疑問をもったことがきっかけ。イギリスに先例となる施設があり、高度専門医療を供給することと、在宅で頑張っている人を支えていくのが両輪。

・在宅に帰っても障害を持つかも知れない。あるいは普通に育っていた子が、命は助かっても、障害を負って帰ることもある。
社会に納得いただけるデータを示すことで、日本各地に、各都道府県に一つはこういう施設を広めていくことが役割であり、使命。民間のお母さんたちが頑張って各地に重心児デーサービスの施設をつくろうとしているが、社会としてつくることが役割。

・高齢化社会に伴い、認知症介護や老々介護の問題がある。
医学の発展がこういう結果をもたらしているが子供にも同じことが起きている。小児科は大人になった30歳の人を診てくれない。移行期にある人たちは数が少ないだけで、社会が目を向けるほどの余力がなかったが、医学の発展は零歳児から老人まで同じ影響を及ぼしている。


■もみじの家の利用状況・取り組みと苦しい経営状況

・家族と過ごせる時間を大切に、個室と3人部屋を完備。
この3月から、新たに子どもの終末期ケアも始める。15人の看護士体制で、日中活動と生活介助、3人掛かりでの入浴介助を提供。入浴サービスはご家族から非常に好評。

・500人が登録し、稼働率は7割。体調不良によるキャンセルも多いが、登録のための面接で3〜4ヶ月待ちの状態。

・経営収支:現状では7,000万円の赤字。元々は診療報酬体系の中で、うまく措置されていない。入院収益に対する人件費が140%と完全にフレーム破綻。補助金が11%と非常に小さく、手厚い人員配置にすればするほど赤字がかさむ構造(年間支出の7割が人件費)

・寄付金は入っているが、あと1年でぎりぎりという非常に厳しい状況。病院本体も黒字ではないのでかなり厳しい足枷となっている。厚労省に診療報酬改定での措置を要望しているが、医療型短期入所については今年度はゼロ回答だった。

・寄付金文化の定着が課題。欧米の小児病院は社会がつくるものという概念が定着し、社会的サポートが充実している。2割ぐらいが税金で、2割〜3割が寄付金。クラウドファンディングの活用で、無菌室をつくることができた。

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《荒井の所感》
社会的に大変有意義な取り組みをされているが、活動に対する理解が浸透していないことや、日本ではまだまだ寄附文化が一般的に定着していないことがネック。「もみじの家」という新しいかたちの支援を軌道にのせて、持続可能なスキームを構築し、全国で待ちわびている医療的ケア児と家族のもとに普及させていくための方策・仕組みを考えることが急務。
3月に開催する次回の永田町子ども未来会議では、内多マネージャーより医療型短期入所に関する課題提起をお聞きすることになっており、今後、議論を進めていきたい所存です。
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☆「もみじの家」に対するご寄付に協力をお願いします!
https://www.ncchd.go.jp/donation/index.html