2017.3.21 第13回永田町子ども未来会議(障害福祉報酬改定への要望)
自民党からは、野田聖子さんと木村弥生さん、公明党の山本博司さん、そして民進党からは細野豪志さんと私が出席。また、フローレンスの駒崎弘樹さんなど実際に医療的ケア児の受け入れを行っているNPO関係の皆さん、小児在宅医療の第一人者である前田浩利先生、当事者の小林正幸さん、そして厚労省、文科省、内閣府の各担当者が出席しました。
関係者がひとつのテーブルを囲んで、時には立場の違いを乗り越えながら、忌憚のない議論を交わすことができるこの場は、常に1分1秒が惜しい議論のやり取りとなっています。(今回は日テレのクルーが取材に入りました)
※次第、出席者の詳細については、添付資料の通りです。
【議論テーマ】
1.小児在宅医療の人材確保の取組について
伯野 春彦 厚生労働省 医政局地域医療計画課 在宅医療推進室長
■添付資料・説明のポイント(資料1)
・日医総研の在宅医療提供機関に対する調査結果によれば、
在宅医療を担う診療所のうち、小児の受入ができないと回答した診療所は42.1%。
「しっかりとした連携病院があれば受入可能」と回答した診療所が10.1%あった。
・常時、小児を受入可能と回答した在宅医療機関は、わずかに5.3%
・今後、小児在宅の医師確保や医療的ケア児に対する医療体制を拡充するためには、
連携・支援強化によって、この10.1%の診療所における潜在的な受入可能性を伸ばしていく取組が必要。
・在宅医療・訪問看護ハイレベル人材養成事業ならびに小児等在宅医療に係る講師人材養成事業の取組について。小児在宅医の充実をはかるため、前田先生の御協力のもとに、平成27年度より全国研修プログラムを実施しているが、今年度からは行政を巻き込むための前田先生からの強いメッセージを受けて、地域の中核となる行政職員も呼んで、小児在宅医と行政が一緒に研修を受ける体制を取っている。
2.障害福祉報酬改定における全国医療的ケア児者支援協議会から要望
駒崎 弘樹 認定NPOフローレンス代表
■議論のポイント
・フローレンス代表の駒崎弘樹さんより課題提起ならびにそれぞれの課題に対応する
具体的な施策要望がありました(資料2)
・医療的ケア児は、重心児ではないため、一般障害児と同様の報酬で預かる児童発達支援
事業では成り立たない。医療的ケア児の場合は、看護師等が必要で、人員配置もほぼマンツーマンに近くなるため、多くの児童発達支援事業では医療的ケア児を受け入れることができない。
・成育医療研究センターを有し、高度小児・周産期医療の最先端である世田谷区でさえも、
27カ所ある放課後デイサービスのうち、医療的ケア児受け入れ可能な施設は1~2か
所。児童発達支援事業と同様に、放課後デイサービスへの医療的ケア児の報酬加算を。
・親が同伴しなくては通学できない現状を変えるため、居宅訪問型児童発達支援事業を、居宅だけでなく、特別支援学校等でもできるように。事業を活用して、医療的ケア児も利用できるような制度設計をお願いしたい。
〇各要望に対して、厚労省障害保健福祉部の高鹿・発達障害者支援室長からは、
報酬上のメリハリなど運用上の工夫で対応ができる課題なのか、
法改正が必要となるかについて、持ち帰ってじっくり検討する旨の発言がありました。
3.質疑&議論等のポイント
〇野田聖子議員より
東京都の学校現場における医療的ケア児受け入れの劇的な方針転換について、歓迎する旨の発言がありました。平成29年からこれまで医療的ケア児の受け入れを実施してこなかった東京都内の盲学校や聾学校等の学校現場で、非常勤看護師の対応により13項目の医療的ケアの実施を決定し、モデル校の選定も行われた。
政治家であり、かつ医療的ケア児を持つひとりの母親として、今まさに「リアルタイムで学校への取り組みを行っている」立場からの大変意義深いご発言がありました。
・「障害福祉報酬改定に向けて、加算が取れるかどうかが鍵。報酬改定、法改正、厚労省通達、できることはプライオリティをあげて手伝いをする。
小児在宅医療の人材確保については、前田先生が東京都でいなくなったら大変なことになるという指摘が以前からもありながらも、第2、第3の医師は小児在宅医療の現場に入ってきていない壁がある。小児科医以外からの参入を考えるしかないのではないか。」
・「学校現場のケアという点では、なぜ看護師にこだわるのか。報酬改定などお金もかかるし、看護師不足で学校への配置を希望する人もいない。医師法17条の医療行為については、親でも医療的ケアをできることを踏まえて、医療知識や福祉知識のある人を取り込む改正が必要ではないか」
・「就学について、支援事業はやたらにある。大変有難いことだが、支援事業の組み合わせ方がパズルのようで、親の頭はそこまで回らない。文科省と厚労省、都と区など地域でも違う。なんで、子どもには介護保険のケアマネのような存在がいないのか。人材確保は、現場の看護師だけではなくトータルでの議論が必要」
〇前田医師
・小児在宅医の人材確保について、埼玉医大の田村教授をヘッドとする研究班による調査で、診療報酬の中で医療的ケアを受けている医療的ケア児の概数が判明した。まあまあ精度の高い数字。平成17年の9,403名から、現在は17,078名と約10年で倍増している。
・人工呼吸器をつけた医療的ケア児は約3,000人で、この10年で10倍増。
大人も含めた「医療的ケア児者」は全国で約66万8,500人、うち人工呼吸器の使用者は26,000人と大変な数にのぼる。
・高齢者の地域包括ケアについては議論されているが、高齢者ですら人工呼吸器をつけるとほとんど預かってもらえないのが実態。医療が進行したら今後子どもにも大人にも起こってくる問題。
〇戸枝 NPOふわり理事長
・医療的ケア児と、高齢者の介護保険との違いは、医療的ケア児の場合は長期にわたって生存するため、要支援状態が続き、介護者の負担が大きすぎること。
介護保険制度のクオリティの高いヘルパーによる高度援護は短時間の利用を想定しており、単価が高い。医療的ケア児の場合、三年ぐらいは集中訓練しないと気管注入できない。
〇山本議員
・報酬改定と法改正をたて分けしながら進める必要がある。
居宅訪問型事業については、看護師が看護ステーションから特別支援学校に行けるようにするなど、国との法改正との連携でしっかり対応していく必要がある。
〇荒井
平成30年の報酬改定に向けた諸課題について、今日提起された課題を中心にいよいよ本質のところを議論していく。財源問題、人的資源、需要と供給の折り合いなどについて、
今後、数回にわたって現実的な落としどころを探るべく議論を重ねることにします。
この永田町子ども未来会議には、経験豊富な事業者も、当事者もいるので、現実的な対応策について知恵を出し合っていきましょう。
〇まとめ
・永田町子ども未来会議として、平成30年診療報酬改定に向け、具体的な施策要望とそれに伴う財源規模、法改正の要否など、政治サイドからのバックアップの方法も含め、
今後数回にわたって議論を収束させていき、提言として取りまとめる方向性を確認しました。