2017.6.6 第15回永田町子ども未来会議開催

平成30年の障害福祉報酬改定に向け、地域のなかに医療的ケア児の居場所を広げていく上で、短期的には最重要となる報酬改定についての議論を中心に行いました。

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医療的ケア児をとりまくスクールバスや介護タクシー利用といった通学支援問題や、学校現場での看護師不足・学校の嘱託医と地域の小児在宅医療との連携体制の確立など、まだまだ課題が山積みになっており、複雑に絡み合っています。

一歩一歩ではありますが、
①運用改正で早期に対応できること、
②3年に1回の報酬改定のタイミングで、いま私たち永田町子ども未来会議が目指している「医療的ケア児加算」
などの手厚い支援事業体制を確立していくこと、
③そして法改正をしなければ制度を変えられない課題を抽出し、解決の方法を探っていくこと。
■今後の動き
今夏の概算要求にあわせて、永田町子ども未来会議としての「提言2017」とりまとめるを決定。
荒井座長の責任の下に、3-4分野に分けてメンバーの国会議員がそれぞれ責任者となる作業部会を立ち上げ、次回7月の永田町子ども未来会議で部門ごとに発表を行うことを決めました。
「提言」取りまとめ後は、各党・各省や政府への働きかけを行います。

作業検討チーム(案)
①医療的ケア児の定義・法改正課題
②学校・教育分野
③報酬改定分野
④福祉サービス分野

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□第15回永田町子ども未来会議の概要とポイント

1.冒頭挨拶                          16:30

【傍聴者紹介】
・「医療的ケア児 市区町村議員勉強会」 渡部 恵子 中央区議、長谷川たかこ 足立区議
【メディア関係者の傍聴・取材】
・山下記者(朝日新聞)/賀川記者・坂根記者(毎日新聞)/由井記者(NHK)
2.学校での医療的ケア問題の解決に向けて           16:35~16:50
〇「医ケア児ママ友の会 本音トーク集」について
前田 浩利 氏 (医療法人財団はるたか会理事長・あおぞら診療所松戸院長)

⇒参照資料:①学校での医療的ケア問題の解決に向けて
小児在宅医療推進のための研究班・報酬改定等提言
平成30年度報酬改定に向けた具体的要望事項等

□資料①~③に沿ったご説明があり、ポイントは以下のとおり。
①学校での医療的ケア問題の解決に向けて、医師が責任を持つ体制をつくっていくことが大事。
学校の最終責任者である校長先生、学校医と嘱託医は、医療的ケア児を必要とする子ども、
人工呼吸器をつけた子どもを見たことがないケースも多い。主治医である小児在宅医療と
学校現場との連携体制の確立が重要。
②診療報酬における医療的ケア児者の定義がないことが問題であり、大島判定による重症心身
・障害児の類型が一度も改訂されていないため、立ち上がった瞬間にケアを受けられなくなる。
医療的ケアを定義する際に、運動機能の障害は考慮しないことが重要。

・高度医療依存の判定と見守りについて、医療だけでは全然だめ。
医療、障害福祉、介護保険にまでにまたがって、未来会議で網羅的な仕組みの提言をすることが意義がある。

□「医ケア児ママ友の会 本音トーク集」について
(※特定の地域・学校名等が記載されており個人が特定できる可能性があるため資料は非公開)

・これでもかなり柔らかく書いたつもりだが、正直切ない、しんどい。
・東京都も動いてくれて、特別支援学校も改善しつつあるが、少数のお母さんによるいじめの実態も。
・看護師が、人工呼吸器の指示書を出している主治医の診断を聞いてくれないし、一切相談もない。
人工呼吸器を毎日時間をかけてチェックすることに医学的には何の根拠もなし。
・命を守ることと保護者の負担を減らすということの学校の役目を果たせているか

野田議員:
・医療行為以前に、耐えられないことに耐えているお母さんたちの現実の声がある。
医療ケア以前の話で、人権問題。
・特別支援学校では少しずつルールの改善が行われており、
(息子さんは)人工呼吸器、胃ろうもないから6月からスクールバスに乗れるようになった。
・今まで一律で全部ダメだったところから、軽度という理由でも一歩前進。
新しい学校なのでチャレンジングな気風があるが、伝統校には伝統校ならではの問題も。
・本来は行政や福祉がやるべきことをお母さんにやらせている。
根性とかではなく、リーズナブルな制度へ変えていかなければ。
・場所によって全然対応が違うところが問題。
通達は、首長から区におりたときにサービスが違う。
義務教育の憲法違反ではないか?きちんと平準化させることが必要。

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3.障害福祉報酬改定をめぐる現状ならびに
「全国医療的ケア児者支援協議会からの要望」に対する回答  16:50~17:10
高鹿 秀明 氏(厚労省 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室長)

⇒参考資料:障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料・障害福祉サービス等の体系

・5/31発足の報酬改定検討チーム 開催要項について説明。
障害福祉は公費で、全額税金負担であるため、どう見える化していくか。
そのため有識者によって公開の場で3年ごとの報酬改定ごとの検討を行っている。
・11月に事業所形態別の経営実態の収支差率がでてくる。
年明け以降、実際の改定案をまとめ、2018年4月以降に新報酬へ。
・報酬改定をとりまく最近の状況(利用者の推移)
・障害児サービス利用24.2万人、障害福祉サービスは10年間で2倍以上に増加
サービス一覧を支える個別給付財源は、1.2兆円。国と自治体 5:5 なので総額2.4兆円

・国費ベースで21年は5500億円、24年8,000億円、27年1兆円、今回が30年改定
改定率は下がって来ている。規模が大きくなって来ているので1%の延びが予算に跳ねるのが大きい。

・前回27年改定の大きな柱は、①福祉介護職員の処遇改善、②地域移行 地域支援の推進
③サービスの適正な実施

・次回30年改定では、サービス事業所ごとの経営実態調査を実施し、一部悪質デーの反省から、
より客観性、透明性の高い手法できめ細かい改定を。

・第13回・第14回永田町子ども未来会議で駒崎さん、戸枝さんより要望のあった、
「障害福祉報酬改定における全国医療的ケア児者支援協議会からの要望」については、
報酬改定で対応できる要望と、実現のためには法改正を伴う要望とを区別して回答。
現行法体系内で報酬改定で対応できる各要望については、検討作業チームによるヒアリングや
議論を踏まえ、しっかりと検討していく。
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4.一括質疑&意見交換    17:10~17:30

〇「永田町子ども未来会議 提言2017」に向けた論点整理
〇 提言のとりまとめ時期について

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≪国の予算編成の仕組み≫

国の予算編成は年に1度です。
例えば来年2018年度予算の中で、新規の支援事業を立ち上げようと考えた場合、前年2017年夏頃の各省予算の概算要求に盛り込む必要があります。
その後、財務省との各級レベルの折衝を経て12月下旬の予算原案が閣議決定され、翌2018年通常国会に予算案提出。
衆参両院での審議を経て、通常は年度内の3月末から4月上旬までには予算が成立し、その後行政府によって予算が執行される流れです。

新しい支援事業ひとつ実現にこぎつけるだけでも、多くの時間を要します。
いま議論している「障害福祉報酬改定」は3年ごとに改定が行われる仕組みです。

抜本的な法改正を目指す場合には、内容によって内閣提出法案(いわゆる閣法)で行うのか、各省間にまたがって省益の調整が難しかったりする場合には、国会議員の一定数の起案・提出による議員立法を目指すのか。
法律の形態と成立までの難易度も様々変わってきます。
■永田町子ども未来会議の思いと役割
一刻も早く医療的ケア児とその家族を取り巻く状況を前進させたいという思いで全力で事に当たっていますが、福祉は国費(税金)で賄われ財源に限りがある事業であり、深刻に支援を必要とする障害児者全体のバランスにも配慮が必要です。
永田町子ども未来会議の最大の強みは、与野党の超党派国会議員ががっちりと目的に向かって連携を組んでおり、厚労省、文科省、内閣府の関係部局の担当者が常に議論に加わっていること、小児在宅医療のスペシャリストである前田先生や医療的ケア児を実際に預かり現場の問題点を熟知している志あるNPO運営者のみなさん、地域行政の現場で医療的ケア児の問題を解決しようと奮闘されている自治体議員や、フォローの記事を発信し続けてくださるメディア記者、そして当事者である親御さんの代表などが一堂に会して、違う立場や角度からの議論を戦わせ、全体調整を出来得る貴重な場です。