2020.06.18. 第28回永田町子ども未来会議

第28回永田町子ども未来会議は、前回に引き続きライブ配信を行いました。アーカイブはこちらからご覧いただけます。(https://youtu.be/2hcE-4ZI7Q4)

1. 冒頭

荒井より、来年度の概算要求に向けての提言をまとめていく大事な時。そのために、多くの関係者に参加していただいているとの挨拶。

2.『永田町子ども未来会議提言2020』に向けた提起

駒崎 弘樹 氏 (全国医療的ケア児者協議会 事務局長)
提言書に添って5つの提言(資料:医ケア協議会提言2020への提案

  1. 医療的ケア児を定義し、「医療的ケア児」報酬の新設
  2. 医療的ケア児者支援基本法(省庁を超えて取り組んでいくための理念法)の制定
  3. 身体障害認定における障害固定6ヶ月の緩和(在宅移行直後から障害福祉の支援を利用可能に)
  4. 障害児を重度訪問介護対象に(現在は大人のみが対象)
  5. 医事法を改正、医療的ケア士の創設→看護師だけでなく、さまざまな領域で医療的ケアをできる人を増やしていく

3. 医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)の本格運用について

本後 健 氏( 厚労省 障害児・発達障害者支援室長 )
医療的ケアが必要な児童等が救急時や、予想外の災害、事故に遭遇した際、全国の医師・医療機関(特に、救急医)が迅速に必要な患者情報を共有できるようにするためのシステム「医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)」について。

(資料:厚労省_MEIS_資料

  • 医療情報の共有(クラウドを使用、全国どこでも共有可能。複数の診療科にかかることも多い医療的ケア児の診察情報の共有を可能に)
  • 医師、患者家族が相互に情報を入力
  • 画像やケア情報も共有(検査画像、処方画像は取り込みが可能)
  • 日々の状況や行動も「ケア記録」として記録閲覧可能
  • 救急医は、医療的ケア児が搬送されてきた際に臨時IDで救急医療情報の閲覧が可能
  • 第三者が情報を閲覧した際には通知で確認、利用停止も可能
  • 災害時の状況 ~安否や薬が足りないなど主治医がみることができる
  • 特に重要な情報は救急サマリーとして即座に打ち出し可能
  • 利用者自身の携帯も可能

現在、詰めの段階。7月末に開設予定。

荒井
熊本地震のときに、医療的ケア児が行方不明になり生命も危ぶまれた。あのような災害が東京で起きたら、数千人の医療的ケア児が命の危険に。早急に網羅したデータベースを。

(コロナ禍で)駒崎さんから医療的ケア児のための消毒液とマスク確保要求があった。野田さんと私が、加藤大臣を本会議場でつかまえて話をした。(野田先生は相当迫力があった/笑)その日のうちに加藤大臣から指示を受けた、未来会議のメンバーでもある佐々木課長から連絡が入り、本後室長たちのチームも全速力で対応してくれた。

4. 日本小児科学会における医療的ケア児支援の取り組み

1.動画および解説:気管切開・人工呼吸器・IVH・立って歩く医療的ケア児に支援ゼロの現状

前田 浩利 医師 ( 医療法人財団はるたか会理事長 )
動く医療的ケア児のケース(動画:ライブ配信のアーカイブをご参照ください)

呼吸器/胃瘻をしている重度の医療的ケアが必要だが、従来の知的障害や身体障害はない。(撮影の)2週間前に5秒ほど立てるようになり、あっという間に発達。どこでも立ち上がり、歩き、自ら呼吸器の付け外しをするため、目が離せない。CVカテーテルの消毒の際には、万が一雑菌が入れば命にも関わりうる医療ケアの際には経管部分を掻こうとしたり、看護師を足で蹴って遊んだり。看護師は様々な方法で子供の注意を引きながら、押さえながら処置をする。→医療的ケアという支援しなければいけない領域が間違いなくある

動く医ケア児のアンケートの結果について(資料:医療的ケア負担度調査レポート

自由記載欄に67件の様々な意見。設定をいじった、人工呼吸器を外す、チューブを抜く…など、医者が見ると恐ろしいことがたくさんある。

2. 医療的ケア児支援について -2021 年度障害福祉報酬改訂に向けて-

公益社団法人 日本小児科学会 岡 明 会長 ※リモート登壇
(資料:医療的ケア児支援について

学校で行われている医療的ケアの例について

WHOの考える新しい健康状態の捉え方→身体の症状/活動(できること・制限)/参加(生活の活動と制限)

必ずしも健康というのは身体の状態だけではない。家庭や社会の環境が大きく健康に関わる。

医療的ケア判定スコアについて
見守りスコア→安全性の確保
医療的ケア→看護師(もしくは他のケアができる人)の必要性

子どものリハビリに重要な6つのF(リハビリの権威であるP.Rosenberg氏による)Function, Family, Fitness, Friends, Fun→Future

経管栄養(Function)で食べる練習(Fitness) を家族(Family)と共にする、喜び(Fun)を感じる。しかし、それだけだと家庭だけに留まってしまう。さらに外の世界で友達(Friend)と過ごす。そこで食事をする友達を見て、さらに食事の練習を頑張ろうと思う。それらがあって未来(Future)につながる。子どもが外に出ていくことは非常に重要。そのための支援が必要。

まとめ

  • 「生活の視点」が大切
  • 医療の枠にとどまらない「福祉」や「教育」からの支援
  • 家庭では家族が常に子供達を見守っている
  • 医療的ケア児が育っていく=社会参加をしていくには、福祉の場での「見守り」が必要

3. 会場との質疑・意見交換 

山本 博司 議員
今回の判定のなかに「見守りスコア」の導入があるが、それ以外の判定の部分について教えて欲しい。

岡 明 医師 (日本小児科学会 会長)
まず、基本的な医療としての重症度。それは、身体的な重症度を考えたスコア。しかし、福祉の場で生活をする際には、別のスコアが必要。家庭で行われている「見守り」をスコア化しようとしたが、すでに家庭ではお父さんお母さんが24時間、当たり前のこととしているので難しかった。そこで、どういう状況であれば見守りのスコアとして重軽度を分けられるのかエキスパートで集まり、スコア化を行った。なので、「見守りとしてのスコア」「身体の重症度(医療的なケアの一般的な身障度)」の2本が合わさっている。

山本議員 貴重な研究の成果。これを受けて厚労で診療報酬のまさしくこれから。よろしくお願いしたい。

堀越 啓仁 議員
作業療法士を現場でしている。ローゼンバームの6つのFは、非常に重要な観点。大きなテーマのひとつは、「『医療』と『教育』と『福祉』のすべてが生活に必要な子どもたちの『参加』」。それが小児医療学会の皆さんのご意見。医療現場はハコモノで、在宅に以降したらケアがなかなか行き届かない。とにかく子どもたちの参加を大事にする制度に。

宮路 拓馬 議員
野田先生の声かけで初参加。大学時代に手話を学び、当時、盲ろう児のサポート・同行支援を行った。堀越さんから参加が重要とあったが、社会にでていくためにはサポートが必要。当時は東京都が同行支援の助成を行っていた。1回サポート2時間程度で1000円程度だったと記憶している。子どもたち、お父さんお母さんが「救われた」と言われた。助成が行われていたのは、当時は東京だけ。他の道府県での導入も求められていた。20年前の話。(当時の学生だった自分のように)医療者じゃない一般の人間が関わるサポートがありうるのか。

岡 会長
例えば医療的ケアの「見守り(安全確保)」では、(経験を有する)それなりの方が必要になると思う。しかし、それ以外の方のいろんな方が参加してくれて、支援の現場に入ってもらうことがかけがえがないこと。普通の方が盲聾の方のちょっと手助けをしたというような経験が積み重なっていくと、社会全体が困っている人をちょっと助けられる社会になっていく。いまの日本は、そのハードルが高い。気持ちはあるのだろうけれど、どうしていいのかわからない。

医療的ケアのケア自体にはそれなりの技術が必要だが、子どもたちが社会参加をする時に、気持ちのある人が参加してくれる、支援してくれるということは今後とても必要になってくると思う。

 

5.『永田町子ども未来会議提言2020』に向けた提起

【広がる自治体間格差の解消に向けて】

光菅 和希(こうすげ・かずき)君とご家族 (リモート参加:資料参照)
備考:光菅和希君(8)と両親は、重度障害を理由に特別支援学校を就学先に指定した川崎市と県の判断を違法として、訴訟。一審判決での敗訴を受け、東京都に転居。転居先では区立小学校の通常学級への就学が認められた。

父・光菅 伸治さん
(資料:2020.06.10.神奈川新聞_就学訴訟の波紋上苦渋の転居で希望かなう 、2020.06.11.神奈川新聞_就学訴訟の波紋下排除する地域あらわ)

資料を見ていただければ現状はわかっていただけると思う。地域格差というもの。川崎ではできなかった事が、東京都に来たことで叶った。川を一つ渡っただけで180度違う。

単純に引越しをして住居を移るということだけではなく、賃貸に住みながら住宅ローンを払いながら家を売却しなければいけない現状がある。医療的ケア児を抱えながら引っ越しをする大変さもある。

東京都でかずきは学校に行けるようになった。コロナの影響でまだ数日だけだが、それでもかずきは大きく変わってきている。引越しは大変だったが、それは喜ばしいこと。小学校に行けるようになってよかった。

大谷 恭子 氏 (弁護士・弁護団団長)
光菅くんは、地元の幼稚園に登園していた実績があり、主治医からの「地域の学校で十分にやっていける」という診断もあったにも関わらず、市教委県教委から普通小学校への就学が認められなかった。

これ以上、裁判で就学を実現するのは時間のロスが大きいと判断。隣の世田谷区にお父さんの生家があったことから住所を変更、就学が実現。現在、世田ヶ谷区立小学校の3年1組に在籍。川を超えただけでなんでこんなにも違う。あまりにも自由で、あまりの格差に親がとまどうほど。

どうして世田谷でできて川崎でできないのか?川崎は初めから「できない」と決め付けている。幼稚園での実績も見ない。医師の診断書や見解も聞かない。他市でやっている事例を視察しているのに活用されていない。人工呼吸器に対する無知と偏見。

世田谷もそうだが、関西を中心に人権教育が歴史的に進んでいるところでは、(医療的ケア児の)就学が実現している。地域間格差は、比経済格差ではない。人権格差。同じ国内で、このような人権格差があっていいのか。

どうすればいいか。これまで分離別学していたものをどうするか。2010年から、障害者の制度改革のなかで議論された結果、「本人と保護者の意思を最大限尊重する」ということが障害者基本法の抜本改正で明記された。それに伴い就学制度も改正。しかし、今回は残念ながらそれが反映されず、従来のやり方が行われた。「(本人と)保護者の意向尊重」(が機能せずに)が地域格差を生んでいるなら、制度改革のもう一つの論点であった「全員就学(就学児全員に就学通知をする)」に立ち返るのか、もしくは文科省から徹底した意向尊重を周知させるなど、なんらかの対応が必要。

大塚孝司 氏 (和希君を支える会 会長/バクバクの会前会長)
(資料:地域校就学者地域別資料_バクバクの会

(資料は、)人工呼吸器使用者の地域校就学者、これは当会で調べた会員とわかる範囲での会員以外の数と現状です。大阪と広島は若干多い。これは比較的人権運動がさかんだった地域で、広島は会員が粘り強く交渉した結果。

教育に携わっている教育委員会の考え方と、そこに関わっている人たちの考え方が非常に古い。どうしようもない。

(就学が実現しているのは)「鶴の一声」というか、校長が「いいよ」、または教育委員会が「この時代だからやらなければいけない」というところ。校長先生の判断で進んでいるところもある。そうじゃないところは、教育委員会の考え方に縛られる。それ以上のことをやろうとしない。それが1番のネック。法律でも学校教育法では「可能な限り」、差別解消法では「負担が過剰でないとき」という言葉が入っていることが、教育委員会側の拒む理由にもなっている。

文科省が「学校における医療的ケアの今後の対応について」を出している。これに沿ってもらえば、地域間格差が生まれることはない。

就学基準の中に、「障害がある子どもは原則、特別支援学校」という言葉が最初に入っている。これを「原則普通学校で、希望があれば特別支援学校」に変えなければ、現状は変わらない。いつまでもインクルーシブ教育にはならない。実際、普通学校に通っている子どもがいっぱいいる。参考にしてほしい。学校と保護者と、関わる人に全員で、みんなの話し合いで個々のマニュアルをつくりあげていくことができれば、格差の問題は解決できる。そして、誰でも希望の学校に進学できる。

荒井
このことについて、決算行政監視委員会の分科会で萩生田文科大臣と議論。大臣は、すべての学校ですぐにインクルーシブの実現は困難だが、モデル的なものを地域ごとに作ることは考えられるとの回答だった。八王子の例や、視察にも行った(インクルーシブが実現している)豊中市の例を示し、もっと周知するべきではとも指摘した。

佐々木 邦彦 氏(文科省 特別支援教育課 特別支援教育企画官 )
訴訟に関してはコメントできない。ご了承いただきたい。就学の決定について、両親あるいは本人の色々な思いがあると思う。就学先の決定というシステムは、両親の考え思いのみならず専門家の意見を踏まえて総合的に判断されることになっている。

関係者(就学に携わる職員等)の心構えとして、①保護者の置かれた状態や考え、心情を理解する。②保護者の伴奏者として対応し、すべきことの優先順位を共有する。③保護者の意向を最大限尊重しつつ、本人の教育を第一に考える姿勢を保つ、と謳っている。③については、保護者の思いと本人の教育的ニーズが異なることもありうるということ。

市区町村教育委員会は、本人・保護者の意見を十分に聞くとともに、置かれた状況を十分に把握し、共通認識を醸成していくことが重要。市区町村の就学児部担当者には、教育支援委員会(修学を検討する場)の事務局として、保護者との信頼関係に基づいた十分な説明を行い、保護者との合意形成に基づいた就学先を決定していくことが求められている。

就学にかかる保護者と教育委員会のやりとりをもとに、最終的に市区町村や教育委員会が総合的に判断するということについて、保護者・本人の希望と結果が異なることは制度上想定されている。極力その差異を埋めながら最終決定をするが、最終的に双方の考え方に違いが生じることはあり得る。各市区町村において、具体的には個々の教育的ニーズが何か、専門的な意見を踏まえて総合的な判断を行う。

その総合的な判断が各自体の地域における教育の体制整備等を踏まえてなされるということから、自治体によって異なる判断結果ということも制度上あり得る。それが制度の現状。他方、一般論として、その総合的な判断が、保護者に対してどのように透明性を持って説明が行われるか、手続きの透明性については非常に重要。

新田 一郎 氏(総務省 自治財政局 調整課長 )
(資料参照:総務省_第28回永田町子ども未来会議資料

(Page2)
地方交付税について。東京は財政が豊か。沖縄や長崎は税源が少ない。放っておくと地域間格差がでる。地域間格差を埋めるための予算が地方交付税で、令和2年度においては16兆5,800億円。各自治体に自由なお金として配分。国は使途制限できない。一方で、法律や政令に元づけられた規模と内容を備えなければいけない。

自治体が国の決定により新たな事務を行う義務を負う場合、国が必要な財源を保障しなければならない。今日話題に出たような、「基本法」や「見守りサービス」「学校の格差の問題」様々な行政サービスについて、国がなんらかのルールを決め、自治体がそれに従わなくてはいけない義務が発生した場合には、国がその財源保障するのが現状の仕組み。

(Page3)
障害者自立支援等に関わる地方交付税措置について。障害児入所給付は国費と地方費から。今日の議論の中心になっている「診療報酬」は、医療行為が行われた時のもので、これの外。

(Page4)
「自立支援給付」や「障害児入所給付」は制度が固まっていて、どの段階でも行える。一方で、今日議論になっている「医療液ケア児等総合支援事業」は「地域生活支援促進事業」に含まれ、<任意>となっている。格差の問題にもつながることだが、「やるかやらないか」は自治体の判断ということ。財政が厳しい中、ここへの予算確保が難しい状況。

(Page5)
野田先生が総務大臣だった際にご指導いただき、交付税の配布方法を変更。障害を持っている子どもが通常の保育園に通う場合、保育士の増員が必要。そのための加配として、400億円を800億円に。しかし、加配のルールが示されているわけではないので、別の目的に使うこともできてしまう。今日の議題になっていた格差(是正)を考えるなら、なにがしかのルールが必要。

荒井
非常にクリアな説明。ルールとは法律ということか。地方の条例ということか?

新田 氏
条例ですと、各地域バラバラになってしまう。法律もしくは政令、またはそれらに基づく何某かの方針を想定している。

地域間格差についての議論

船後 靖彦 議員(代読)
ALSを発症し、2002年より18年間、人工呼吸器を使用。医療的ケア児、特に人工呼吸器を使っているために、地域の学校に入れない問題に憂いを感じている。文教委員会でも就学にかかわる質疑をしてきた。大変深い勉強をさせていただき、感謝。今後に役立たせたい。

質問・意見:就学指導委員会で保護者の意向とともに専門家の意見を聴取し、行政・教育委員会が総合的判断という仕組みになっているが、その判断に参加している医師は、そのお子さんをずっと見てきた主治医ではない。どうしたら学校でやっていけるかを判断できるのは、その子の状態を一番よく知っている主治医であるべき。仕組みを再考・再構築する必要があると考える。

前田 浩利 (医療法人財団はるたか会 理事長 )
(文科省の)学校における医療的ケア児の最終報告書は、よく出来ていて配慮されているが、現場では必ずしも尊重されていない。現場における大きな問題の一つ。文科省は、主治医の意見を聞くようにというが、尊重されず、看護師も主治医の指示を唯一きかない、たぐいまれな地域圏が学校。

荒井
メイス(MEIS)のシステムのなかに、文科省的な要素はないが、せっかくここまでつくったなら、学校教育にどんな要望があるか等、個別な要望も出てくるのでは。

上久保 秀樹 氏(文科省 特別支援教育課 支援第一係長)
去年1年間、検討会にオブザーバーとして参加。学校でも使いやすいように 岡先生ともお話をさせていただいてきた。元々、特別支援学校の修学旅行、宿泊学習などの参加の際の子どもの安全安心を目的に、学校でも活用できるように調整していただいていると認識。

本後  健 氏(厚労省 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室長)
修学旅行などの救急の場面で使うことをメインに想定。今後、いろんな応用可能な仕組みにはなっている。かなり工夫の余地はある。運用を始めてから、様々な動きを反映させながらできる改善を随時行っていく。

荒井 やっとインフラができたというところ。

野田 聖子 議員
光菅さんの裁判をずっと見守っていた。結果をとても残念に思う。負けるときの様々な要因がある。立法府の不作為もあると思う。障害児の教育は、そもそも「学校にくるな」というところから始まって、養護学校、特殊学校、特別支援学校 まだまだスペシャルで、他の子と区別するというのが根底にある。インクルージョンというのはそれがなくなること。だから、学校基本法の改正を立法府が手がけていかなければ。

光菅さんも大変だったと思うが、私も息子のために3回引っ越した。「障害=特別支援学校」というのは違う。特別支援学校も区分けしている。知的障害/視覚・聴覚/身体障害、医療的ケアというのはない。うちは知的障害があるということで、知的障害のための支援学校に導かれた。医療的ケアをやっていないというのは、特別支援学校も前提。

先ほどから言われている総合的判断だが、総合的判断のためには知識が必要。しかし、教育委員会に知識がない。法律ができてまだ数年。誰も通達を真面目に読んでいない。そもそも面倒くさい。知識のない中での総合的判断は無理だということを文科省も理解してあげなければいけないのでは。

医療的ケア児が支援学校に行けば、良い医療的ケアを受けられるかというと、それは違う。それは早く通達を出していかなければいけない。

特別支援学校の良さもある。世間の差別から身を守ってくれる。子どもの世界は、差別が辛辣。大人と違って配慮がない。障害を持っている子に対して厳しさもある。特別支援学校には専門性の高い先生もいるので、障害に応じた対応も可能。

ただし、いま日本の方針は何もかも、医療も福祉も「地域社会で」となっている。特別支援学校はスクールバスで通うため、残念ながら地域のこどもたちとの友情が育まれない。

日本の大方針が「地域で生きていく」ということならば、障害児も当然地域のなかで生きていける、親が死んだ後でも周囲の子どもたちとなんらかの関わり/人間関係を持てる事が一番のインフラ。これまでの教育は余裕(金)があるので「障害者はどこでもちゃんと面倒をみますよ」だったけれど、今は財政が逼迫していて、だから「地域で」「人の力を頼りにして」やっていかなければいけないとなっている。そういう時代になっているのだったら、学校教育法もそれに合わせていかなければいけない。基本的にすべての地域の子は同じ学校に通って、一緒に育っていく中で、国が背負えなくなった様々なマンパワーを地域でははっきしてもらう。そうやって連動していかなければいけないと思う。

医療的ケア児は新参者。教育委員会が総合的判断をする知識を持たないということを前提に、これを乗り越えていかなければいけない。学んでいない人が多い。リスクを取りたくない人が多い。どうしたら、学んでもらえるか。

法務大臣を経験して痛感したのは、「福祉」と「教育」は極めて地域主権。今も、(コロナで)オンラインやってるところ、分散登校やっているところ、やっていないところ…、私たちは今、教育には国の一貫性がないということを学んでいる。私たちは医療的ケア児をこの、地域間格差のある教育の中で、どう平準化させているか。

木村 弥生 議員
コアなところは、聖子先生のおっしゃる通り。船後先生とお会いできて光栄。(総務大臣政務官として)分身ロボットを使って本会議出席ができるように頑張ったが、できなかった。申し訳ない。

小林さんの息子さんは18歳。これからはどう就労して、生きがいを持っていきていけるか。まだまだ枠がついて行っていない。今後もご指導いただきたい。

細野 豪志 議員
地元では、障害や外国人の問題など、教育委員会と何度も話してきた。交渉権限はあっても、リスクをとってやる人はいない。実際は情報やケースが少ないため、「国から言わないと変わらない」という状況をずっと見てきてる。(地方)分権というのは美しい姿だが、地方がそれぞれ変わるのを待っていても仕方がない。新たな問題については厚労省や文科省に頑張っていただいて、国から踏み込んでいただくしかないのではないか。

戸枝 陽基 氏(社会福祉法人むそう NPO ふわり理事長)
前回、報酬改正のため、散々議論を重ねてきたにもかかわらず、事業所の報酬が370円しか上がらなかったということで、マインドが冷えてしまった。考えれば考えるほど、医療的ケア児というのは新たな障害類型なのだと思う。特に医療と福祉を同時に使うということ。さらに、教育に関われば医療者が一緒でなければ支えられないということ。なので、医療的ケア児者の支援協議会としては、医療的ケア児者の基本法を作って欲しい。

すべての「のりしろを貼る」という作業を国政レベルでやっていただかないと、この子たちは救われない。とりわけ、省庁を応援するような政治の動きが一番大事。よろしくお願いします。

荒井
障害者支援法を改定して「医療的ケア児」という言葉を入れるだけでも、大変な努力があった。しかし、それによって各省庁が地方自治体にいろいろな形で通達を出すことができた。それによって、意識の高い自治体は動き出した。

野田先生が言われた通り、教育と社会保障というのは地方自治の権限が非常に強いところ。そのため、各地域の首長、そして地方議会を構成する地方議員の方々に、この問題に積極的に参加してもらおうと、永田町子ども未来会議では地方議員にも可能な限り入ってもらうようにして来た。コロナの問題で少し(リアル参加を)遠慮してもらっているが、彼らへの働きかけは非常に重要。


【資料】
0_第28回永田町子ども未来会議次第
1_医ケア協議会提言2020への提案_駒崎氏
2_厚労省20200618永田町子ども未来会議MEIS_資料
3A_資料-永田町子ども未来会議200618_前田先生
3B_医療的ケア負担度調査レポート_前田先生
4_永田町子ども未来会議_岡明先生
5_就学訴訟の波紋上苦渋の転居で希望かなう
6_就学訴訟の波紋下排除する地域あらわ
7_20.03.31朝日新聞_川崎裁判投稿記事
8_20.05.06東京新聞_分け隔てない教育を_木村英子議員
9_舩後議員コメント
10_2020.03.23DPI日本会議抗議声明
11_2020.03.23.公教育計画学会声明
12_2020.03.23弁護団控訴お知らせと判決への抗議声明
13_川崎就学訴訟判決の最大の過ちについて
14_2020.03.24.川崎就学裁判抗議声明_バクバクの会
15_2020.03.27.JIL川崎就学裁判の不当判決に対する抗議声明
16_佐藤陽一さんコメント
17_川崎市の就学裁判3月18日判決に対する抗議障問連_大谷弁護士
18_2020.06地域校就学者地域別配付資料_バクバクの会
19_総務省_第28回永田町子ども未来会議資料

以上